短編

□0cmの距離
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「明日空いているか?」

いきなりの言葉に彼女はコンピュータを操作する手を止め
その言葉を発した男であり、彼女の彼氏でもある平門の方を向く。

『どうしたんですかいきなり。』

不思議そうな顔で平門に訊ねると

「明日、休暇がとれたんだ。
どこか一緒に行くかと思ってな。」

いつも忙しい平門が休暇がとれるなんて珍しい。

『平門さんが良いのなら…………行きたいです!!!』

そう言うとクスリと笑って優しげな表情になる。

そんな表情少しドキッとしてしまう。

☆☆☆

「じゃあ、明日。」

『はいっ!!!』

まさか、事件の報告に来たらお出かけの約束がとれるだなんて……。

ラッキーだな…………そう思い頬が緩む。

明日が楽しみだ!!!

どんな服を着て行こうかな。
お化粧してみようかな。

でも、やったことないからできるかなぁ。

イヴァ姐さんに頼んでみようかしら。
そんな事を考えながらスキップして廊下をいく。

ああ。明日が楽しみだなぁ…………。

☆☆☆
次の日。

約束は昼ごろなので、朝からイヴァ姐さんに頼み込んで服などを貸してもらった。

服はかなり露出が高い服に決まり(というかイヴァ姐さんは露出が高い服しか持っていなかった)髪の毛はいつもボサッとおろしているのに今日は下の方に軽くカールがかかっている。

めったにしない化粧までしてもらった。

なんだか、私ではないみたいだ。

腕には平門さんに貰った大切なブレスレット。

平門さんとのお出かけの時や大切な任務の時にお守りとしてつけている。

カツカツと靴の音を廊下に響かせながら平門の部屋へ向う。

しばらく歩いていると向こうの方から見覚えのある金色の髪の彼が走ってくる。

「おーいっ!!!!」


『與儀。』

凄い勢いで走ってきた彼は私の前で急ブレーキをかける。

「わぁ………今日はお化粧してるんだね!!!」

『あ、分かる?イヴァ姐さんにしてもらったの。』

「すっっっごく似合ってるよ!!!」

そう言って満面の笑み。

忠犬だ………………。

「あ、もしかして平門さんと……?」

『ええ。』

「あー!だから!!!」

大きく叫んでポンっと手を叩く。

『ん?何が?』

首を傾げる

「実はさ、昨日ね平門さんが明日用事があるからとか言って今日やる予定だった資料のまとめとか昨日の夜中までずーっとやっててさ!!!」

え……………?

「何の用事なんだろうっておもってたんだけど、なるほどねーっ」

そう言いながらニヤニヤしている。

『そうだったんだ…………。ありがと與儀。』

「ん?何が?」

『その事。教えてくれて』

「どういたしまして」

ニコッと笑い合う。

與儀とバイバイして、少し歩くと平門さんの部屋に着いた。

コンコンコン

『平門さん。私です。』

「入っていいよ。」
いつも通りの優しい声。

『失礼します。』

ドアを開けるといつも通りの優しい笑みで迎え入れてくれる。

「おはよう。」


『おはようございますっ』

「今日はいつもとは違う感じだな。」

『わ、分かりますかっ!!!イヴァ姐さんにお化粧してもらったんです』

気づいてくれたのが嬉しい。
頬が緩んでしまう。

「お前は、どこに行きたい?」

『あ、私は……………その。』

「ん?遠慮無く言っていいんだぞ?」

『その…………どこにも行きたくない………です。』

その言葉に彼は少しびっくりした顔をする。

「どこにも…………?」

『だ、だって平門さん昨日の夜中までお仕事してたって聞いたので…………それで。』

そう言うと平門さんはハァッとため息をつく。

「全く與儀は…………。」

怒らせちゃったかな…………?

『そのっ、私。どこかに行くのも楽しいけど平門さんと一緒にいるだけで楽しいっていうか…………。

だから、今日はいつも話せないようなプライベートなお話しましょう!!!
お仕事は今日だけ休んで。お茶しましょう!!!』

にへっと笑う

「全く………………お前には敵わないな。」

『じゃあ、私お茶入れてきますねっ!!!』

席をたった瞬間腕を持って引き止められる。

どうしたんだろうと首を傾げる。

そのまま腕を引っ張られ平門さんとの距離は5センチくらい

数秒後。

唇と唇が触れ合った。

0pの距離

(なっ………………え、)(何を照れているんだ?)(わ、笑わないでくださいよ!!!)(いや、可愛いなと思って。)


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