短編

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目を覚ませば、いつも通りの風景。

だけど、気持ちはちょっと違うんだ。


「んー、いいお天気」


雲一つない快晴。
まるで、私の心を表しているようで。





「名前ー準備できたか?」

「うん、今行くよ」


朔と一緒に手を繋いで向かう。
今日は、特別な日。


私の人生の中で、最も特別な日なんだ。









別々の部屋に入っていって。

みるみると変貌していく自分。
幼い頃、何度も夢に見たこの純白のドレス。



"なあ、名前"

"んー?"

"俺たち、付き合ってから結構経つよなー"

"うん、そだねぇ…"

"だからさ、もういい頃合だと思ってよ"

"…朔?"

"名前、俺と結婚して欲しい"



あの時、泣くほど嬉しくて。
ああ、私、生きてて良かった、なんて思った。




「名前ー、入るぞー」

「うん、いいよ」


ガチャ、と空いたドアから顔を覗かせる朔。

私を見て、その表情は固まった。


「…どう?…やっぱ変かな」

「……いや、すげぇ……綺麗だ」


思わず見惚れちまった。

そう言って、朔は私の唇にキスをした。


「さあ、行こうか?お姫様」

「ふふ、何それ」


ねぇ、朔。
私、今すっごく幸せなんだ。

本当に、夢を見ているみたい。










ヴァージンロードを歩くとき、父はいないから平門に頼んだ。


「まさか、お前と朔が結婚なんてな」

「えへへ、私自身も驚いてるんだ」

「なんだそれは」

「えへへへ」


朔が、いる。

私を待ってる。

平門と話しながらも、私の目に映るのは朔だけで。
あと少し、というところで平門が口を開いた。



「知ってるか、名前」

「ん?」

「俺、お前のことが好きだったんだぞ」

「……え、」


お幸せに。

そう言って平門は私から離れた。


「ったく、あいつ、ここで言うこたぁねぇだろうによ」


どうやら聞こえていたみたいで、朔が苦い顔をしている。

私と朔が向き合って、牧師が読み始める誓いの言葉。

朔は私と目があうとにっこり微笑んでくれて。


「誓います」


響く誓いの声。


では、誓いのキスを。


ベールがはらりとめくられる。

先程よりもはっきりとする朔の顔。


「名前、愛してる」


触れ合う瞬間、聞こえたその声は。





white
(真っ白に輝いた)
(羽のような)
(花びらのような)
(雪のような)



((これが私たちのスタート地点))


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