小説
□くすぐったい その2
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1時間後、熱斗は炎山のマンションへ向かうべく、遅刻しながら走っていた。
「ロック、あとどれくらいで着く!?」
「そこの角を右に曲がってすぐだよ!」
ロックマンに道案内をしてもらいながら炎山の住むマンションへたどり着く。
マンションの前にはにこやかな炎山が待っていた。
「やぁ熱斗、遅かったね、心配したよ」
「え、炎山……?!」
「炎山くん……どうしちゃったの?」
「どう考えても30分も遅刻したからだと思うが……」
IPCで開発した新型PETのCMは大抵副社長である炎山が出演している。
その時に見せる営業スマイルのような爽やかな笑顔で熱斗の肩を掴む。
「熱斗、俺の部屋に行こうか」
「お、おう」
あまりにも普段とキャラが違う炎山に戸惑いつつも、2人は最上階にある炎山の部屋へと向かった。
「おじゃましまーす」
炎山の別宅とも言えるマンションは、毎日を会社で過ごす炎山のために買われたもので、所有はIPC社だ。
社宅という表現も間違ってはいないが、このマンションはセキュリティに特化したマンションであり、ひそかに有名人たちも住んでいるという噂がある。
本宅に戻ることが少ない炎山は、常にここで寝泊まりをしている。
「炎山のうち来るの久しぶりだなぁー」
「そうだな。なんか飲むか? 一応お前が来るって言うんでリンゴジュースを買っておいたんだが……」
「俺は子供か!」
「子供だろ?」
「う……まぁ……。じゃあリンゴジュース頂戴」
いつもと様子の違う炎山にペースを乱されながらも、出されたリンゴジュースを一気に飲み干す。
どうやらよっぽど喉が渇いていたらしい。
「ブルース、ロックマンと出掛けてこい」
「はい、ありがとうございます」
「熱斗くん、行ってきます」
2人のナビが嬉しそうに出かけていく。
これで準備は完了、と言わんばかりに炎山が笑う。
「熱斗、今日お前を呼び出したのはな……」
「ん?」
ソファの上でくつろぐ熱斗に顔を近づけて、そっとキスをする。
熱斗は驚いて目を丸くした。
「え、えんざん?」
「熱斗、頼みがあるんだ」
「な、なに?」
「俺にもお前をくすぐらせてくれ」
「……はい?」
炎山の申し出に、熱斗は戸惑いつつも了承した。
「でも俺、くすぐり強いよー?」
「かまわん。やってみたいだけだ」
「ならいーけどさ……」
そして炎山の提案で2人は寝室に移動することに。