小説

□くすぐったい その後の話
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「ひっ、あっ、くっ、ふふっ、も、やめて、やめっ……!」
「やっぱ炎山はくすぐられてる方が可愛いなぁ……」
「いい、からっ、ひゃっ……んぅ、もう、やめろ、ねっと……」

ガチャ、と金属が擦れる音がする。
どうしてこうなったのか、と炎山は先週の出来事を思い出す。

熱斗にくすぐられ、自分だけじゃ納得がいかなかったから熱斗もくすぐって、背中が弱点だと突き止めた。

そこまでは良かった。

だが今日、熱斗は真っ黒な笑顔でやってきた。

「炎山、くすぐらせて?」

と。
……警察が使うような手錠を持参して。


「はぁ、ぁ、ふふっ、ん、やっ、むり、むり、やだ、ゆるしてっ……」

喘ぎながら身をよじり、逃げられないこの状況で必死に熱斗に許しを乞う。

残念ながら熱斗の加虐心を煽るだけだったが。

「この間たくさん炎山にくすぐられたからなぁ。まぁ、名目としては、お仕置き? ってことで!」
「はぁ、はぁ、はぁ……なに、が、お仕置きだ、バカ……!」

熱斗がくすぐりをやめ、息を整えることができた。その間悪態なんてつかなきゃいいのに、ついつい炎山は悪態をついて、熱斗にお仕置きの理由を与えてしまう。

「炎山、もっとくすぐられたいの?」
「っ……!」

脇を人差し指でなぞられる。
声を出すのは抑えられたが、体がビクッと震えた。

頭上でベッドの柵と一緒に手錠をかけられた手は抵抗を封じ、仰向けの体にのしかかってる熱斗が体の動きを封じ、文字通り身動きができない。

「炎山」
「なんだ……」
「もっとしたいなー」
「……ことわる」
「断れないの、分かってるくせに」

唇にキスが落ちてくる。
熱斗の舌が炎山の唇を舐めるが、炎山は仕返しとばかりに口を開こうとはしない。

そんな小さな反抗が楽しくてしょうがないのか、熱斗はニコニコしながら炎山の脇と脇腹を軽くくすぐる。

「ぁっ……」

小さく喘いだところに舌を滑り込ませ、炎山の口内を犯していく。

もちろんくすぐることもやめずに。

「んっ……! あ、んっ……ふ、ぅ……」

くすぐりに体が震え、熱斗のキスに翻弄され、炎山の体から徐々に力が抜けていく。

「ねっ、と……」
「炎山……あーもう可愛いなぁ!」

ぎゅ、っと抱きしめると炎山がびっくりした声を上げる。

「ね、熱斗?!」
「もう無理……だって炎山超可愛い」
「い、意味分からんことを言うな!?」
「炎山が許して下さいって泣き叫ぶまでくすぐりたい……!」

さすがに命の危機を感じた炎山が身震いした。
でもこれも熱斗の愛情表現だと分かっているから、炎山はきっとそうなっても逃げたりはしないのだろう。

「とりあえず、この手錠を外せ……」
「えー」
「えーじゃない。手が自由じゃないと……抱きしめられないだろうが」

顔を赤くしていうそのセリフに、熱斗の理性はもうダメだった。

「え、炎山……!」
「いいからこれはずせ! ひゃっ!?」
「炎山、もうちょっと喘いでて!」
「まっ、ねっと、だめだ、ひぅ、んぅ、んー!」

唇を噛み締めて耐えたのが30秒。
許しを乞うまで耐えたのが5分。
最終的に散々泣かされたのが30分。

そのあとどうなったかは、彼らのみ知る。


翌朝の炎山は、不機嫌MAXからの声が枯れる、腰の激痛という三重苦に悩まされ、その日一日仕事を休まざるを得なくなったとさ。




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