小説

□くすぐったい その2
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少し前の話だが、炎山は熱斗に初めてくすぐられた。
その感覚は炎山が今までに感じたことのないもので、上手く笑えずに喘ぐようになってしまった。
熱斗としては満足だったようだが。

しかし、熱斗はどうなのだろうか?
もしかしたら熱斗も……と、炎山が考え始めたところでPETにメールが届いた。


「炎山様、光からです」
「読んでくれ」

『この間の炎山マジでエロかったなぁ。顔真っ赤にして小さく喘いで、襲いたくなるくらいっていうか、』

「まて、まて、なんだそれは」
「……どうやら、メールというよりも……」

焦る炎山、そしてそれを読まされていたブルースは比較的冷静に考える。
炎山がメールの全文を自分で見ようとした瞬間、オート電話の着信が。

「……もしもし」
「炎山、メール読まないで!」
「手遅れだ」
「だー! ロックマンの馬鹿ー!」
「ご、ごめんね熱斗くん」
「なんで勝手に送るんだよ!」
「そんな大事なものならもうちょっと隠して保存してよ!」

「頼むから俺を置いて話を続けないでくれ……」

ぎゃーぎゃーと喚く声がPETの向こう側から聞こえてくる。
騒がしいな、と一言つぶやく。

そしてようやく静かになったところで、ロックマンが事を説明してくれた。

熱斗が数日前、こそこそと何かを打ちこんで、そのファイルをなぜか一番わかりやすい所に保存していたこと。
しかもそれが文書ファイルじゃなくてメールだったこと。
熱斗のメール相手は最近炎山ばかりなので、ロックマンが炎山宛だと思って送ったこと。


しかしそのメールは熱斗の日記代わりで、惚気の吐き出しどころだったこと。


「……事情は分かった」
「炎山様……」
「ブルース、そのデータを欠片も残さずデリートしろ」
「かしこまりました」

ブルースは展開されていたメールを閉じた。あとでデリートするつもりなのだろう。
PETの向こうでは頭を抱えているであろう熱斗の残念そうな声が聞こえてくる。

「……熱斗、次こんなものを見つけたら……」
「み、見つけたら?」
「1ヶ月電話もメールもしない」
「うぅ……分かったよ……」

熱斗が反省したのでそろそろ電話を切ろうと思った炎山は、ふと何かを思いついた。

「……ブルース、今日はまだ何か予定はあったか?」
「いえ、本日の予定は既に全部終わっております」
「そうか……熱斗、今からマンションにこい。試したいことがある」
「へ?」
「さっきからブルースも落ち着かなくなっていることだしな」
「え、炎山様!?」

慌てるブルースに、ロックマンに会いたいんだろ?と笑いかければ、ブルースは困ったように頬を指でかいた。
一方熱斗は先ほどの落ち込みから一転、喜びで天井を突き破ってしまいそうなほどはしゃぎ、1時間後に炎山の住んでるマンションの前で会うことを約束した。

電話を切った炎山は息を吐くと、何やら楽しそうな目で笑った。
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