小説
□不毛な争い
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「プラグ、イン! ロックマンエグゼ、トランスミッション!」
科学省内に響き渡る声は、別室にいた炎山やライカにも聞こえた。
「熱斗も来てたのか?」
「……らしいな」
だが、科学省に熱斗も来るという話を聞いてなかった炎山は、いささか不機嫌な様子。
「なんだ、熱斗に何も言われなかったのか?」
「……あぁ」
ますます不機嫌になる炎山。
少し離れたデスクのパソコンに繋がれた2台のPETからは気まずそうな空気が漂っていた。
「……お前のオペレーターは言葉を選べないのか」
「……あれがライカ様だ」
悪気があるのかないのか、ライカの言葉はじわじわと炎山を追い詰めていく。
「確か熱斗とお前は付き合ってるんだよな?」
「ぐっ……」
返す言葉もない。
炎山が悔しそうに顔を背けた時、ドアが開いた。
「あっれー、炎山、ライカ! 2人とも来てたなら言ってくれよー」
「久しぶりだな熱斗。まさか熱斗も科学省にいるなんて知らなくてな」
「今日はパパにロックマンのメンテナンスしてもらいに来たんだ。それでさっきウイルスバスティングで最終チェックして、終わり」
楽しそうにライカに向かって話す熱斗に、炎山はこみあげる何かを感じていた。
その殺気にも近いオーラを感じ取ったライカが炎山の方を向く。
「……ふっ」
「なっ!? 貴様、最初から……!」
その笑みから、ライカが意図的に炎山を苛立たせる発言をしていたことがわかり、怒った炎山がPETを掴む。
「え、炎山様!?」
「ライカ、勝負だ!」
「ふん……無駄な戦いだな」
「なんだと!!」
「え、あ、おい、炎山?!」
驚く熱斗とブルース、そして勝ち誇ったようなライカ。
炎山がいつになくムキになってライカに無理やりネットバトルをさせようとしているその横で、
「あ、そうだ、サーチマン。これ、サーチマンにもあげようと思って」
「? なんだ、これは」
「貝殻だよ。この間海に行った時に綺麗だなーって思って、みんなにもあげたいなって。でも僕らネットナビだから、本物はないけど……データで作ってみたんだ。どう?」
「あぁ、綺麗だな。貰っておく。ありがとう」
ロックマンが自作したキラキラと光る貝殻データをサーチマンに渡していた。
その様子を炎山のPETの中から見ていたブルースから、明かな殺気がダークソウル顔負けの黒さで溢れ出ていた。
「俺もまだもらっていないのに……。炎山様、やりましょう。サーチマン、相手をしろ。訓練だと思えば良いだろう」
「……とんだとばっちりだな。良いだろう、ライカ様、オペレートお願いします」
ブルースが怒った原因がしっかり分かっているサーチマンは半ば呆れたようにライカにオペレートを頼む。
未だに何がなんだか分からない熱斗とロックマンは2人の間で慌てている。
「2人とも何やってんだよ!」
「そうだよ、ブルースもサーチマンもやめてよ!」
「面白そうだ。遊んでやれサーチマン!」
「行け、ブルース! 八つ裂きにしろ!」
熱斗とロックマンの制止も虚しく、2人とそのナビらは同時叫ぶ。
「「バトルオペレーションセット」」
「「イン!」」