菜花起々の恋愛事情〈BL〉

□Only Star【完】
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「誰も居ねーなあ…」

放課後の校内を適当に歩いているが、珍しく誰にも会わない。これは予想外だ。

…いや、生徒全員が暇だとは言わないけどさ、誰か一人くらい会ってもよくない?

人知れず、はあ、と溜め息が漏れた。

…因みに何故校内を彷徨いているのかというと、部室へ向かう途中に部長と出会し、

「今日休みね」

と、いきなり休み宣告をされたからだ。
事情を訊くのも面倒なのではいと素直頷いて部室に行くのを止めた。

そんなこんなで思わぬ休みを貰った。それ自体は別にいい。
ただ、する事が何も思い付かなかった。
それなら勉強すれば、とよく言われるが、やる気が湧かない。ついでに、家に帰る気もまだ起こらない。

友人をざっと頭に浮かべてみるが、恐らく暇な奴は居ない。大概は部活に勤しんでいるであろう。
…いや、一人は部活だけど彼女と居る。まあ、あの二人はちゃんと活動してるか。真面目だし。

「…適当に彷徨くか」

知らない人でも、暇を潰せる相手くらいは見付かるかもしれない。
俺は軽い気持ちで彷徨きだした。

…だが、その認識が甘かった。

そして今に至るのである。

敷地面積の兼ね合いもあって人がバラけているのかもしれないが、それにしても珍しい。

「大人しく帰れって意味か…って、あり?」

半分諦めかけていた時、角に人影が見えた気がした。
角から顔だけ出して確認する。見間違えではなかったようで、其処には生徒が居た。

しきりにキョロキョロしている…何かを探しているようだ。

「ん…?」

不意にぽつんと落ちているメガネが視界に入る。もしやと思い、再度生徒を見た。…足下がフラフラしている。
間違いないと確信し、メガネを拾ってその生徒に声をかけた。

「君、探しているのってコレ?」

すると、肩をビクッと震わせ恐る恐るといった様子で振り向いた。
俺の方が身長が高い為、必然的に見上げられる形になる。

…その時に俺は、ああコレが人に恋をする感覚かと瞬時に悟った。

あろうことか、目の前の男子生徒に一目惚れした。
初めて心の底から可愛いと思い、同時に抱き締めたいとさえ思ってしまった。


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