数々学園高等部・徘徊記録

□徘徊No.6:体育祭と保健室
2ページ/44ページ

一佐の呼びかけで、皆がやりたい競技を一斉に言い出す。
一佐は、文句こそ言っているが、それらを丁寧に捌いていく。

「…劉二、生徒会企画って何をするんだ?」

先程、ざっと黒板を見た時に疑問に思ったので訊ねる。

「あァ…当日に競技内容が発表されるんだが…正直ロクなモンじゃねェぞ。」
「どういう意味だ?」
「競技自体は普通だが、他の競技より遥かに点が高い。その分、マイナスも発生する。」
「…ハイリスクハイリターンって事か。」
「…そうだな。だから、皆いきたがらない。責任が凄いからな。」

…責任云々の言葉が出てきた理由は、最下位クラスには、何らかの罰ゲームがあるからだろう。

しかし、必ず誰かがやらなくてはならない。

「俺、やろうかな。」
「…はッ?正気か?」
「どうせ、誰かがやらなくちゃいけないんだろう?」

何とはなしに言うと、盛大な溜め息と共に、

「…零ってお人好しだな。」

と、呆れた口調で言われる。

「そうか?」
「そうだよ。…たく、分かった、俺も出る。」
「…いいのか?」
「いいよ。零を放っておけねェし。」

言うなり、劉二は、

「日々谷!俺、『生徒会企画』に出るから。あと、零も一緒に。」

一佐に向けて言い放った。

途端、静寂が訪れる。

…その沈黙を打ち破ったのは、

「……はッ?えッ…?零、も…?」

一佐だった。

…いや、かける言葉それ?と思いつつ、一佐の問いかけに、頷く。

一佐は、考え込んだかと思えば、

「…チッ、しゃあねェ、俺も出るしかないようだな。ちょうど3人だし。」

と謎の言葉を呟いて、『生徒会企画』と書かれたその下に、劉二と一佐、それに俺の名前が記入される。

「ヘェ…。」

その時に、絵十君がクスッと妖しい笑みをこぼしたのを見逃さなかった。

ただ、俺は、その意味が分からなかった。
何より、教室が騒がしくなり、それどころでは無くなってしまった。

(…?まァ、いいか。)

そして、些細な事だろうと思って気に止めなかった。


.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ