番外篇
□ある日の軒上家〜バレンタイン篇(零:中学二年)
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零霞の場合(〜Side 零霞)
登校すると、挨拶もそこそこに、お菓子…世にいう友チョコを手渡される。
手作りから既製品まで様々だ。
中には、私が作り方を教えた人も居る。何でも、本命があるとか。
さらには、
「あの…コレ、お兄さんに渡してくれるかな?」
なんて依頼もある。
…身内を抜きにしてもカッコいいからね、二人共。
毎年の事で手馴れていて、特に珍しくもないので、
「うん、分かった。」
と快く引き受けている。
…まァ、そんなこんなで人からお菓子を貰う。
その度に、お返しとして自分が作ったお菓子を返す。
…正しくは、自分と零兄と作ったお菓子、だが。
それを知ったら、女子生徒が騒ぎ出すので言わない。
そして、それが比較的落ち着いた頃に、
「零霞って、好きな人とか居ないの?」
友人の八十八待莉(ヤソヤ・マツリ)が突然そんな話題を出した。
「…どうしたの?藪から棒に。」
思わず聞き返す。…考えた事もない話だ。
「ホラ、零霞の事が好きな男子多いのに、誰にも靡かないから。」
「…いやいや、何言ってるの?」
私の事が好き?…ナイナイ。あるハズがない。
そんな私の考えている事にお構いなしで待莉は続ける。
「いやいや、この間告白されたの知ってるんだよ?その割には浮いた話は何一つないし…どうなってんの?」
…どうなってんのって言われても、ねェ…。
「そりゃあ、実際無いワケだし…。というか、告白だってからかわれてるだけだって。私なんかよりもっと良い人が居るよ。」
そう、私みたいのなんかより、良い人(男)が。
うんうんと、ひとりでに頷いていると、待莉が深い溜め息を吐き、
「…うん…色々、酷いと思ってるけど…もうなんか…何でもいいわ……。」
ザックリと話を終わらせられた。
―学校で、
「…やっぱり今年もダメなのか……?」
「いや、まだ放課後まで時間がある!希望を持て!!」
「そ、そうだ、時間はある!義理でも貰えるかもしれないだろ!」
「…俺、心折れそうだわ…。」
「オイ、しっかりしろ!!」
なんて会話が流れていたのを零霞は知らない。
(あッ、ネタ発見!やっぱいいわ〜。)
待莉は勿論、校内の人たちが零霞が腐っている事を知らない。
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