数々学園高等部・徘徊記録

□徘徊No.5:休日と妹
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未だ寝ている劉二をよそにいつでも身体が動くよう、トレーニングをする。

休日なので、最低10時まで劉二が起きる事はないが、それでも念の為、できるだけ音を立てずにしている。

と、間延びしたドアホンの音が鳴った。

瞬時に気配を探り、一佐ではない事を確認する。
慌ててメガネをかけ、ドアを開けた。

「はい、どちら様ですか?」
「アレ、君か。」
「…双方君?」

一佐以外の人が来るのは珍しい。というより、俺が知る中では初めてだ。

「劉二、まだ起きてないの?」
「あー、最低10時までは起きてこないと思うけど…起こそうか?」
「いや、いいよ。また来る。」

…ん?何かいつもより雰囲気が違う?
……この雰囲気って…

「あッ、ちょっと!君、弟の方…結十君?」

去ろうとしていた脚が止まる。

「…どうしてそう思う?」
「えっと…纏っている雰囲気とか喋り方が若干違うというか…。」

すると、目が見開いたかと思うと、いきなり俺の両肩をガシッと掴み、

「…君、凄いねッ!」

口調が変わり、ハイテンションではしゃぎ始めた。
…どうやら、当たりのようだ。

というか、絵十君の姿でこの口調って違和感あるな…。

「絵十はともかく、僕とは全然話してないよね?」
「…あー、うん。」
「うわッ、長年一緒にいるタカ達でさえたまに間違うのに…。」
「…タカ?」
「あァ、会長の事。」

…付き合い長いのか、あの面子。

「いやァ、流石、さっちゃんだね。」

またしても、聞き慣れない単語が聞こえてくる。

「さっちゃん…?」
「風紀委員の副委員長さんの事。」

…何この、重役で繋がっている感じ。

「うん、来たかいがあったよ。」
「…ところで、双方君は何しに?」
「ん〜、ヒマだったから来ただけ。あッ、僕の事、名前でいいから。ややこしいし。」

理由が色々と酷いな…。

「じゃあ、僕はもう行くね。今日中にまた、来るよ!」

それだけ言って、兄に見せかけた弟、結十君は足早に去っていった。

呆気にとられながら、部屋に戻り、トレーニングを再開した。


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