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□初体験
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「草薙さん!!」

俺は豪快にバー『HOMRA』の扉を開けた。

驚いた顔で此方を見る草薙さんは小さくため息を漏らした。

「なんや、騒がしい奴やな…」

草薙さんは溜め息を漏らし、めんどくさそうにするも、俺の話を聞いてくれる。

「友達に彼女できたみたいでさ…」

「妬いとんのか、お前」

「ち、違うよ!!だって…アイツ…彼女とキ、キス…したって!!」

「普通やろ、キスぐらい」

「普通じゃないよ!!だって俺らまだ中学生だし」

俺はバーのカウンターを叩きながらそう言った。

「なら、中学生がこんなとこに入り浸ってんのも不味いんとちゃいます?」

俺は言い返す言葉がなくなり、俯く。

俺としても、よく考えればキスぐらいどうってことない。

ただ、キスなんてしたことがないから、一人取り残されたようで不安になっただけ。

「お前…キスしたことないやろ」

図星を指されて俺はびくりと方を揺らす。

「し…、したことあるよ」

俺は強がって嘘をついた。

「嘘つくなや」

もちろん、すぐにバレてしまうのだが。

「何で解るかな…」

俺は溜め息をつきながら下を向く。

結局、まだ中学生の俺は高校生の草薙さんには敵わないってことだ。

「十束」

「ん、何?」

「俺がしたろか」

「…何を……って、え!?」

意味を理解した俺は一気に顔が熱くなっていくのを感じた。

「待ってよ、草薙さん…俺男…」

ゆっくりと此方に向かってくる草薙さんから逃れようと、俺もゆっくりと後ずさる。

後ずさってる内に壁に突き当たり、俺はこれ以上逃げられなくなった。

どうすることもできなくなった俺は覚悟してぎゅうっと目を閉じた。

…が、いくら待ってもなにもおこらない。

そっと目を開けてみると

「冗談や」

と、草薙さんが笑うのが見えた。

俺は腰が抜けたようにその場に座りこんだ。

「草薙さんの馬鹿…」









「…するならしろって」
少し期待した俺が馬鹿みたいだろ。



End

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