残酷物語
□If there is no arm
1ページ/2ページ
俺は散歩していた。
ただ普通に散歩していただけだった。
しかし、急に草が足に絡まった。
何故かかなりしつこく絡まり動けなくなってしまった。
俺は草をちぎろうと腕をのばすが腕は無いため、ちぎれずに終わった。
そして、ふと、顔をあげると芝刈機がこちらに向かってきている。
ものすごいスピードでだ。
どうして俺には皆みたいに自由に動かせる腕が無いのだろう。
カドルスやペチュニアだって一度腕を無くしていたし、はっきり言えば皆、何か失っているはずだ。
なのに皆は次の日には何事も無かったように戻っている。
なんで、なんで俺だけ?なんで俺だけ腕が戻らない?
腕が無いと色々不便だ。
今も腕が無いせいで逃げられない。
どうせなら、いっそこのまま死んでしまいたい。でもどうせ生き返る。
俺だけ?俺だけ差別されてる?ハッピーツリーは俺だけ見捨てた?
ただ辛さだけを感じろって?
そんなの不公平だ。
なんで、なんで俺だけなんだ。
瞬時の間に沢山の思いが込み上げてきた。
ついでに涙がボロボロと込み上げてきそうになるが、耐えていつものようにしかめっ面をする。
ぐんぐんと近づいてくる、芝刈機。
俺は死を悟ると、ハッピーツリーがある方角に向かって叫んだ。
『ど…うして…!!』
そう叫ぶと同時に身がちぎれた。激痛のあまりに腕を振り上げ、芝刈機をとめようとした。
しかしやっぱり腕なんて無いから止めれる筈も無く。
そうして俺はむせかえるような血の臭いの中、何度目かの死を迎えた。