*Secret-Story*
□きみはペット【バンビ】
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「おかえりぃ、翔くん。」
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ある日、仕事から家に帰ると
ソファで可愛い小人がくつろいでいました。
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「………」
「美味しいねぇ、これ(モグモグ)」
「それ、オレの…唐揚げ…」
「ふぅん、からあげっていうんだー。」
「……」←楽しみにしてたのに
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大きさはおよそ10�ほど。
緩いパーマがかかった黒髪に、琥珀色の瞳が何ともキュート。
そして
小さな花びらのような桃色のお口が
もきゅもきゅと夢中で頬張っているのは
レンジでチン!して食べようと
大切に大切に取っておいた
“オレの”、唐揚げだ。
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「(え?何なの?夢?)」
「喉が渇いたなぁ」
「……まさかオバケ?」
「(ニコニコ)」
「なんでオレの名前知ってんの?」
「(ニコニコ)」
「名前は?」
「んー、決めていーよ。」
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小人はソファにごろんと横になると
ぽこりと膨らんだ小さなお腹をスリスリ撫でた。
……お前はおっさんか。
世間の親父はよくそんなポーズとるぞ。
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「これからしばらくよろしくね〜」
「……はぁ!?」
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どうやら
夢でも幻覚でも、はたまたオバケでもないらしい……。
小人は口の周りについた食べカスを
ハムスターのように可愛く拭うと
まるで紅葉のような
ちっちゃい右手をヒラヒラと振って笑った。
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