銀魂・短編
□永遠に
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タッタッタッタッ
スパーン
勢いよく開け放たれた襖からは朝日の光が眩しく射し込む。
『おはよう!銀時!!朝だよ、ほら起きて!!』
睡眠の邪魔をされて顔を歪めながら身動ぎするが起きる様子はない。
「…うーん…」
『ほら!!しゃきっとしなさい!!』
寺子屋時代。俺はよくこうやって里奈に毎日起こされたもんだ。
里奈は寺子屋に途中で入ってきたが茶目っ気のある笑顔ですぐみんなと仲良くなってた。
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「ハァ…ハァ…」
『銀時?大丈夫?…ボケっとしてたらやられるよ…』
「…ああ。」
ここは戦場。周りには敵も味方も見分けがつかないくらいの死体の数々。
「どうした銀時、昔の事でも思い出していたか?」
「うっせーヅラ…まぁな、よく昔…朝起きれない俺を里奈が飽きもせずに起こしにきたなって思ってよ。」
『昔って…銀時いまも起きないじゃん。』
「……違ぇねーや。」
斬っても斬っても次から次へと増えていく敵陣。
三人で相手をするには少し多すぎる。
幸い大きな傷は負っていないがかすり傷がたくさんある。
「ちくしょう…ここで足止めくらってるわけには…」
「一刻を争うと言うのに…」
三人の目的はここより先にある天人の宇宙船。
しかし大量の天人達に行く手をはばまれ思うように進めない。
里奈が静かに口を開く。
『銀時、桂。先に行って。』
「何バカなこと言ってんだ!お前残していけるわけねーだろ。」
「そうだぞ里奈。さすがにこの量はお前一人では無理だ。」
しかし、里奈は引き下がらない。
『いいから行って!!ここはあたしが食い止める。ここで三人死んだら意味がないの!あなた達しかやれないこと。お願いだから行って!』
里奈はそう言い捨て、敵の中に入っていく。
ザシュ ザシュ
舞い散る紅と二つの刀
「里奈!!」
『いいから行けっつーの!!』
「里奈お前死ぬ気ではないだろうな!?」
桂がハッとなって問いかける。
里奈は次々に敵を斬り倒しながら
『そんなわけないでしょ!!いいから早く行け!!』
里奈の目は輝いていた。侍の目だ。
「銀時!!」
「クソッ! 里奈!!帰ってこなかったら許さねーからな!!」
銀時は里奈に向かって叫ぶ。
里奈は返事はしないものの片腕を上げて了承する。
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それからしばらく、あれほどいた天人の群れもいまは半分以下となり里奈の勝負は目に見えていた。
しかし、里奈は深手を負っていた。
肩に数ヶ所の刺し傷。腹にも数ヶ所の刺し傷。至る所から出血していた。
『……ハァ…ハァ…こんな時に目が霞んでくるなんて……フッ……あたしも落ちたもんだ。』
里奈はもうすでに死を覚悟していた。そんな中でも立っていられるのは仲間を守りたいと言う信念からだろう。
銀時……桂…ゴメン。あたし約束果たせそうにないや…だからせめて、ここにいる敵を倒してから…それまでは倒れられない。
里奈は最後の力を振り絞り駆け出した。
『攘夷志士 梅咲里奈参る!!』
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銀時と桂は急いで里奈の元へと戻っていた。
いくら里奈が強くてもあの量ではさすがに心配だった。
戻ってきた時には、先程よりも血が散乱していて敵が誰一人とたっていなかった。
しかし、里奈の姿もない。
「里奈ー!里奈ー!!……里奈!!」
天人と共に倒れている里奈の姿。銀時と桂は急いで駆け寄り。
銀時は里奈を抱き起こした。
「里奈!!オイ里奈!」
里奈の傷は酷かった。どこを見ても致命傷には違いない。
「里奈。オイ、返事しろよ。」
里奈の身体は少し冷たくなってきていた。
『……ぎ、……銀時………』
里奈はか細い声で銀時の名前を呼んだ。
「里奈!!無事か!待ってろすぐ連れて帰って手当て『…いいの。』 え?」
銀時の言葉を里奈が遮った。
『……いいから……聞いてお願い…きっと…もう…言えないことだか…ら』
「…何いって……」
信じたくなかった。いや信じられなかった。自分の腕の中で弱っていくのが里奈だなんて。
『……銀時……ずっと…ずっと……好き…だった……』
「っ!!」
『……いましか……言えない……と思って……アレ?…おかしいな…どうして……涙が…』
綺麗な薄紫の瞳から大粒の涙が溢れた。
『……やっと……思いを伝えられたのに……でもあなたを……守れて……よかった…』
「……里奈……」
『…銀時……あなたは…生きて…生きて…この世界を…少しでも…変えて…』
だんだんと弱々しくなる里奈の声。
『……大丈夫……銀時なら……できる…だって……いまは…こんな…立派に…なったんだもん…』
「…里奈、もうしゃべんな!」
里奈はゆっくり銀時の頬を撫で顔を近づける。
『…銀時……最後に…あなたの…顔が……見れ……て…よかった…』
「里奈!」
二人はどこからともなく、吸い寄せられるかのように深い口づけをした。
愛を確かめるべく…
スルっと里奈の手が頬から落ちてゆく。銀時はそれを自分の手でもう一度と頬へとつける。
里奈はもう息をしていない。
「なぁ…里奈…」
里奈の顔の上にポツポツと涙が落ちる。それが里奈から流れ落ちる。まるで里奈も泣いているように…
「……返事しろよ……また、しゃきっとしなさいって…いつも…みてーに…言ってくれよ…オメーにそれ言われねーと元気でねーんだよ……なぁ、里奈!!…っ」
銀時は里奈の身体をきつく抱きしめ。声を押し殺してないた。
その様子を桂は遠くで黙って見守っていた。
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それからしばらくして、攘夷戦争は幕を下ろした。
攘夷組の敗北と言う終わり方で…
攘夷戦争でば、たくさんの攘夷志士達が死んだ。 血濡れの美蝶 梅咲里奈。この人物を失ったのは実に致命的であろう。
女子(おなご)の身にして死ぬ瞬間まで武士道を貫き通し…侍として最後を飾り…舞姫の如く散っていった。