ツバサ・クロニクル
□阪神共和国
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「………っ!」
「ぷう!みたいな」
目が覚めると目の前には白くて丸いもののドアップが目に入った。
目が覚めたばかりで思考回路が回らずゆきは挙動不審になり辺りを見渡す。
「…つっこんでくれない。えーんえーん」
「あー!目覚めたみたいだねぇ〜」
金髪の男性がへにゃんとそう言うとこちらに近寄り白くて丸いものを抱き抱えた。
「一応拭いたんだけど〜、雨で濡れてたから。」
「えっ…」
(もしかして…裸…?)
「あっ軽く拭いただけだから安心して。あと気になるところは…これでどうぞ〜♪」
へにゃんと笑いながら彼はタオルをゆきに差し出した。
「…ありがとうございます。」
(確か…この人はファイ?)
「モコナも拭いた―!ほめてーほめてー!」
(あっこの子は侑子さんから渡されたモコナ…可愛い。)
「モコナもありがとうv」
あたしはモコナを抱き締めた。
モコナを抱いているファイと一緒に。
「あっごめんなさい!」
ゆきはファイも一緒に抱き締めている事に気付きすぐに離れた。
「大丈夫だよ〜気にしないで〜♪」
そう言いながらもファイは少し顔が赤らんでいた。
「そういえば少し魘されてたようだったけど…大丈夫?君…えっと…」
「ゆきです。心配してくれてありがとう。優しいんですねv」
ゆきはファイの両手を自分の手で覆い上目遣いで見つめる。
「でも何の夢を見てたのかさっぱり…忘れちゃいました…えへへ。確か…ファイさんですよね?これから宜しくねv」
本当は忘れていないが色々干渉されるのが嫌でゆきは貼り付いた笑顔で嘘を付く。
「ゆきちゃんかぁ〜可愛い名前だねぇ〜こちらこそ宜しくね〜♪」
ファイもまたゆきの嘘に気付いたが気付かないフリをし貼り付いた笑顔を見せた。
(この人の笑顔…何か嫌いかも)
「ぷう!みたいな!」
モコナが先程と同様に今度は小狼に絡み始める。
「さ…くら…」
「つっこんでくれな〜い…しくしく」
「目覚めたみたいだねぇ〜♪」
「さくら!!!」
小狼はさくらの無事を確認すると少し強く抱き締めた。
「雨で濡れてたから一応軽く拭いといたよ〜♪寝ながらでもその子の事離さなかったんだよ〜君…えっと〜…」
「小狼です。」
「そうそう!小狼くん。こっちは名前長いんだ〜ファイで良いよ〜♪…で、そっちの黒いのは何て呼ぼうか〜?」
「黒いのじゃねぇ!黒鋼だっ!」
「黒鋼ね〜黒ちゃんとか黒りんとか呼んでも良い〜?♪」
「え〜あたしは黒とか黒んぼが良いな〜v」
「ふざけんなっ!っうわっ!おいてめっ!何膝の上乗ってやがる!」
よく見るとモコナが黒鋼の膝の上でじゃれていた。
「わ〜!モコナばっかりずる〜い!」
ゆきも負けじと黒鋼の膝の上に乗ろうとする。
「うわっやめろ!」
黒鋼は顔を赤らめその場から逃げ出した。
「くろ〜待ってよ〜!」
「うわっ!!」
ゴソゴソ
「ん?小狼くん?ファイ?」
見るとファイが小狼を襲っていた。
「…あたし初めてホモの人にあった。」
「何してんだてめぇ…」
「ゆきちゃん酷いな〜俺ホモじゃないよ〜…これだよこれ〜♪」
ファイの手には一つの羽があった。
「これがその子の記憶のカケラ…なんだよねぇ?君に引っ掛かってたんだよ。一つだけ。」
(この人何嘘ついているんだろう…だってこの羽今あの人から…)
ファイはゆきが睨んでいるのに気付いていたが知らないフリをした。
「これが…さくらの記憶のカケラ」
ファイの手から記憶のカケラが離れるとさくらの身体の中にそれが入っていった。
「体が…暖かくなった」
小狼は嬉しそうにさくらを抱き締める。
(この子…こんな風に笑うんだ。よっぽどこの子の事好きなんだな〜)
「今の羽が無かったらちょっと危なかったね〜」
「俺の服に偶然引っ掛かったから…」
「この世に偶然なんてない」
皆の視線がゆきに集まる。