HQ!!BL
□△と独りの関係
1ページ/2ページ
赤葦の熱視線は相変わらずだった。
たまたま行き合って一緒に登校しているとき、1組から3組までの合同体育をしているとき、昼飯を中庭で食っているとき、部活の休憩中に話し込んでいるとき。
相変わらず、途切れることなく注がれている。木兎に穴が空いたらどうしてくれる、と半ば本気で憤ってしまった。熱心すぎるだろ。そして、ここまでされてもまだ木兎は気付かないのかと半ば呆れてしまった。
俺は深いため息をつく。なんか最近ため息ばっかついてるな。
と、そんな風にやきもきしたり、いつ木兎が気付いてしまうか気が気でなかったり、この前までは一人で勝手に忙しくしていたのだが……。最近では二人のあまりの進展の無さに、もうすっかり慣れてしまった。いつまでも見詰める赤葦に、いつまでも気付かない木兎。そんなのが当たり前の光景となり、俺も赤葦を少しずつ気にしないようになった。
もちろん今のうちにと木兎にアプローチをしたり、牽制するつもりで木兎を見詰める赤葦を横目で睨み付けてやったり、そうやって俺だけが気付いている、俺以外は気付いていない、三角に満たない関係に甘んじていた時。
俺はふと、気付いたことがある。
それは本当に何気ない、なんてことない、ただの思い付きだったのだが、一度気付いてしまうとそれはとても不自然なことのように思えてきて、考えれば考えるほど妙だなという思いが膨れ上がっていく。
そうだ。なんで赤葦は……。
俺はわりと長い時間木兎とつるんでいる。できるだけそうしようと努力しているのだから当然といえば当然だけど、授業合間の休み時間も木兎に辞書を借りに行ったり(木兎はほぼ百パーセント持ってないが。)帰りもなんとなく木兎が着替え終わるのを待ってたり、昼飯も暇な時は一緒に食べて、課題を前に唸っている木兎にさりげなく助け船を出してやって……。
はて、やはり不思議なのだ。
俺は無意識に首をひねる。不可解な事象にこんがらがる。
どうしたー? と隣にいる木兎がきょとんとした顔で尋ねてくる。なんでもねーよーと朗らかに答えてから俺は上を見上げた。
こんなやりとりも赤葦の監視下にあるのだろう。案の定、見上げた先にはガラス越しに視線を注いでいるソイツがいた。
やはり、俺が見上げているというのに、視線が絡まることはなく。
「木葉腹でもいてーの?」
木兎の声に俺は首を元の位置に戻す。見ると木兎はなにやら企むようににやりと笑っている。
「腹痛いんじゃお前のカツサンド俺が食べてやるぜ。」
「それお前が食べたいだけじゃねーか。」
「当たり〜!」
悪びれもせず笑っている木兎に若干呆れつつ、ほれと木兎の口元にカツサンドを持っていってやる。と、遠慮なくがつりと噛みつかれた。
「ゲッ」
「んぐんぐ……うめー!」
「ちょ、お前一口デカすぎだろ!」
「木葉ありがとな〜!」
「ありがとな〜ってお前……部活中腹減ったらどうしてくれる!」
「そーんな怒るなって。」
ほれ、と今度は木兎が持っている焼きそばパンが差し出された。俺は少し躊躇ったが、お返しとばかりに大口で噛みついてやった。
「うっわ木葉一口デカッ!」
「お前よかマシだわ。」
少し熱くなってしまった頬を誤魔化すようにニヤリと笑う。木兎はチクショーと言いながらも、笑顔で焼きそばパンを口に放り込んだ。
「……見てることは確かなんだけどな。」
「ん?」
「いや、独り言。」
赤葦が見ているのは木兎で、赤葦は木兎しか見ていなくて、
アイツは、嫉妬したりしないのだろうか?
その疑問はますます膨れ上がったのだった。