HQ!!BL

□ああああ
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「ああ、あ……ああああ」

あー、とまるでチューニングするかのように声を吐き出すその姿は、かなり滑稽だった。

「本当に声が出ないのか?」

「あぅ」

こくりと頷く及川。あ行だけは出るらしい。

「なぜ俺に相談しに来た?」

不思議に思って聞く。なぜ、わざわざ俺、牛島若利の元へ来たんだ?

そう問うと及川は難しい顔をしてあーあー、とまた喚く。そうか、YESかNOでないと答えられないか。思ったより不便だぞ。

「まぁいい、来い。」

あうあうと鳴く変な生物を連れていたら不審者じみている。とりあえず二人だけになれる場所で事情でも聞こう。俺は及川の手を取った。すると及川の肩が大袈裟に跳ねて、ばちっと振り払われる。

「……なんだ?」

いぶかしがって聞くと、及川は途端しまった、という表情になって慌てて顔の前でバツマークを作る。手はダメだ、ということだろうか。まぁセッターだし、その気持ちは分からんでもないが。

「じゃあいい、付いてこい。」

すると及川はしおらしく付いてきた。それは少し不思議な光景で、俺のあとを黙って付いてくる及川に俺は微かに高揚した。
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