HQ!!BL
□俺が君に告白することに愛なんか無い
1ページ/1ページ
「ウシワカちゃん好き!」
「ダウト。」
「嘘じゃないよ!?」
こんなやり取りは何回目だろうか、俺は自分に呆れていた。
俺、及川徹は平凡だ。せいぜい頑張っても秀才止まり。頑張るだけじゃ天才にはなれない。天才ってのは、あの壁を越えることができる奴のことを呼ぶんだ。
センスはあるし努力も惜しまずそれでも壁は一向に越えられない。だって俺には壁の厚さはおろか、その高さだって分からないんだ。予測不可能なその壁を越えられるのは、きっと君と肩を並べて歩ける人たちだけ。
平凡な俺にそんな資質はもちろん無い。でも、それでも焦がれて憧れて。
君と並ぶことができたなら、この壁も越えることができる。
そんな幻想を抱いて今日も俺は壁を越えようと足掻いている。
「お前の告白には誠意が感じられん。」
「誠実さだね!?結婚を前提に付き合ってください!」
「微塵も感じられんな。」
「そんな!!俺はウシワカちゃんへの愛で溢れているのに!」
また今日も届かなかった。頂は果てしなく遠くて、君には手をかけることさえ許されない。
君と並ぶことが、こんなにも難しいなんて。やっぱ格が違うのかな。そうなんだろうね。でも俺には諦めることが出来ない。俺は壁を越えたい。どうしようもなく平凡な俺の、大それた野望。
ねぇ俺どうしたらいいんだろう。焦がれすぎて憧れすぎて、おかしくなりそうなんだ。でも、方法がちっとも分からないんだよ。君と並ぶにはどうしたらいい?
「ウシワカちゃん今日もかっこいいね!好き!付き合って!」
「いい加減こんな茶番、やめないか。」
「もーウシワカちゃんため息吐かないでよ!」
止める?できれば俺だってそうしたいね。でもさ、凡人は天才に憧れる他ないんだよ。それに、君と並ぶ方法なんて、他に何があるって言うのさ。お友達?そんなの嫌だよ。俺天才って嫌いだもん。嫌いだけど憧れてしまうなんて滑稽だけどさ。俺は壁を越えたい。そのためには手段を選ばないよ。強くなりたいって思うことに理由はいらないし、そのための行為はなにも惜しまない。
ウシワカちゃんのことなんか、全然好きじゃないのに。
でもどうしても君と並びたい。
あぁ、違ったね。
天才であれば誰でもいいんだ。俺は壁を越えたくて、そのためにはお前らみたいな天才と肩を並べなきゃいけないんだから。
天才っていうならトビオでもいいしその方が扱いやすそうなのに、あえてウシワカちゃんに告白しているのに、意味なんかないから。
「ウシワカちゃんって何が好きなの?」
「バレー。」
「だと思った!」
「お前もそうだろう。及川。」
「そうだよ、それとウシワカちゃんのこともね!」
「ふざけるな。」
あははそうだね。全部嘘だよ。だけどふざけてなんかいないよ。結構切実に君と並びたい。じゃないと壁の姿さえ捕らえられない。最悪並べなくてもいいから、でもそばにいないと壁を見失っちゃうでしょ。
バレー好きだったはずなんだけどな。もうなんかよく分かんない。
「うっしわーかちゃーん!好きだよー!」
「それよりその呼び方をやめろ、及川。」
「えー、じゃあウシワカちゃんが付き合ってくれるなら止めてあげる。」
「論外だな。」
「ケチ。」
あーもう。
少しくらい折れてくれたっていいじゃないか。
当たっても、当たっても、
砕けるのは俺ばかりで。