HQ!!BL

□一年生
1ページ/3ページ


及川徹、きっとコイツは神に愛されている。

俺こと花巻は、一年のとき、そんな風に思った。

「「及川く〜ん頑張って〜!」」

まず、女子にモテる。華やかな雰囲気に整った顔立ち。入学早々目立っていた。同級生の間ではたちまち噂が広がり、その日から女子に囲まれるようになった。次の日には上級生の方まで噂が広がり、バレー部に入部すると、マネージャー希望者が殺到したらしい。

しかもバレーがめちゃくちゃうまかった。あーもしかしたら既に先輩よりうまいかもしれねぇ。でもそこで僻まれたり妬まれたりしない。

「調子乗んなよクソ川!」

いつも隣に岩泉が居る。コイツがことあるごとに及川につっかかる。異常なほどにつっかかる。なんかするたびに殴る。女子と話してるとボール投げる。さすがにひでぇ、と思うのだが、そのお陰で及川を悪く思う奴はいない。なんか夫婦漫才見てるみたいで面白いし。憎む気にはなれない。たまにイラつくけど。

いい幼なじみに恵まれたな、と思う。

先輩1「及川、お前中学ん時よりすげぇうまくなってんじゃねぇか。」

先輩2「おう、俺もヤバイかも。」

及川「いやぁ、先輩方に憧れて、必死に練習しましたから。」

先輩方「「(照)」」

あと及川の人の扱い方はうまい。こんな風に厭らしくない程度のお世辞と、辛辣だけど正しい本音をうまく使って人と接している。世渡り上手というやつか。コイツが潤滑油みたいな役割もしてて、チームが全体的になかがいい。ほんわかしていると言うか、強固なつながり、スムーズな連携がある。あぁやっぱ及川すげぇな。

何より、コイツと一緒に戦ったら勝てる、と思わせるところがすげぇ。

俺は遠くからぼんやり及川を眺めていた。先輩に囲まれながらも和やかに話をする及川。岩泉はそんな及川をボールを磨きながら見ていて、なんか生意気なことを言ったらすぐにボールを投げようという気合いが感じられる。俺を含めた及川以外の一年は先輩と臆さず話す及川を、尊敬を込めて見つめている。

なんだろうな、ここの空気はお前に支配されてるよ。

あまりにもぴったりとすべて噛み合っていて、少し恐ろしく思うこともあるのだ。

入学して、入部して、まだたった1ヶ月の及川に、俺たち青葉城西バレー部は、心臓を握られてるような気がするんだ。






─────────────────────────家臣はさ、やっぱ早いうちに味方につけないと。

神に恵まれた大王様は、今も変わらず君臨す。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ