HQ!!BL

□消毒
1ページ/3ページ


「トビオちゃーん。今度の土曜日暇?」

いきなりやって来てなんの話だろうか。
俺は目の前で笑う及川さんを見て若干呆れた。前置きとかそういうのないのか。挨拶すらすっ飛ばしてきたよこの人。

「暇ならウチの学園祭においで。」

及川さんは俺の返事を待たずに誘いを切り出した。聞いといてそれですかとさらに呆れる。
及川さんの顔はニコニコと笑顔満開で、高校生男子には似つかわしくない可愛らしさを感じた。って何感じてるんだ視力落ちたか俺。

「学園祭ですか。」

目をこすりながら及川さんの言葉を噛み砕く。学園祭、土曜日、今週は暇?確か烏野の学園祭は……再来週あたりだったはず。正直あまり興味は無いが、クラスの雰囲気が少し浮き足たっているのでなんとなく知っていた。

「そう、学園祭!青葉城西の一般公開日が今度の土曜日なの。」

俺が聞き返すと及川さんはご機嫌になった。しかも有無を言わせないオーラを放っている。
及川さんが誘ってきた時点で断るという選択肢は無いのだけれど、あまりに強制といった様子なので、少し反抗心が疼いた。
なのでちょっとした嘘をつく。

「残念です。その日は烏野も学園祭なので行けません。」

「見え見えの嘘つかないの。そんなに及川さんがいやデスカ。トビオちゃん生意気ー。」

瞬間的に看破された。別にバレないような嘘をついたつもりも無かったし。
拗ねたように頬を膨らませる及川さん。女子か。それが似合ってるところがまた凄い。

「トビオちゃんの学園祭は再来週でしょ。及川さん下調べバッチリなんだからね。」

今度は不敵に笑い、もちろん行くよと怪しげに言った。何か企んでそうだった。背筋がぞわりとする。

結局俺に拒否権はない。及川さんの手のひらの上って感じはどうにも嫌だけど、及川さんが誘ってくれたという嬉しさがぐっと込み上げてきた。

もちろん来るよね?

及川さんが小首を傾げて尋ねてくる。

素直に頷いてやるのは癪なので、俺は如何にも嫌そうに、長々と溜め息をついた。

「その日はたまたま暇で部活もないし、仕方なく行ってあげますよ。」

「ホント、トビオちゃんって素直じゃないよね!」

生意気!って及川さんは言うけど、なんだかその顔は嬉しそうだった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ