HQ!!BL

□勇気
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あ、これは夢だ。

瞬時にそう理解した。

俺は今、布団のなかで横になって。俺の部屋……だと思うのだが、細部はぼやけていてよく見えない。ここが何処か、なんていうのはとるに足らない些末なことっていう意味かな。

重要なのは、及川さんが、俺の横で添い寝しているということだ。

及川さんが、俺に添い寝している。

夢にまで見たシチュエーション。ていうか実際今夢見てる。

及川さんの寝顔……。

目を凝らして目に焼き付けたいところだけど……。
これは所詮ただの夢であるし、あんまり目を凝らしちゃったりして、うっかり目が覚めてしまっても勿体ない。

取り敢えず俺は及川さんが隣にいるという幸せに浸った。

あー現実じゃあやっぱあり得ないよなー。色んな意味で。

まず及川さんが俺に添い寝するわけないし。もししてくれても心臓破裂しそうだろうし。及川さんの匂いとかに興奮して添い寝どころじゃなくなりそうだし。

こんな風に、幸せに浸るってことは無いだろうな……。

……俺は。


夢は、えーっと何だっけ。
しんそうしんり……しんぞうしんり?
とかなんとか。

とにかく自分の一番素直な欲求が現れるものらしい。

要するに、俺の願いは……。

及川さんと同じベッドで朝を迎えたい。

……ということか?

今が朝かどうかはハッキリしてなかったけど、ていうか時間といものを意識してなかったけど、そう思うと急に朝のような気がしてきた。
まぁ夢だし当たり前か。

なんというか、欲望に忠実というか……。

煩悩丸出しというか……。

でも濡れ場を夢に見なかっただけマシかもしれんな。
それと比べると健全っていうか純愛だよな……。

自分を正当化して及川さんへの恋愛感情を美しいものにしたてあげてみた。

実際は美しくなんかない、むしろ醜い執着のような愛だけれど。

及川さんのためなら死ねるけど。

及川さんのことなら殺せるけど。

他にも監禁とか凌辱とか束縛とか嫉妬とか汚い言葉がいっぱい浮かんだけど。

天使みたいな及川さんが隣で寝てくれているのを思い出して、それ以上深く考えるのを止めた。

天使みたいって……。

そう思ってるからなぁ。
仕方ないのか。

綺麗な綺麗な及川さん。

あなたは居るだけで俺を救い、笑うだけで俺を喜ばせ、そして、存在そのものが俺にとって苦痛なんです。

幸せだけど、嬉しいけれど、

それが俺のものにならないなんて。

苦しくなる。

心が汚れていく。

でも、

及川さんを見つめる時だけは、

ただ純粋に、好きだなぁと。

ただ単純に、愛しいなぁと。

そんな風に思えるんです。

夢の中の及川さんに懺悔のような告白をした。

及川さんの長いまつげが静かに震えて。いや、そんなものは見えなかったけど、そんな気がして。

ゆっくりと目を開く及川さん。

「おはよう、トビオ。」

人形みたいな及川さんの微笑みに、俺は自分だけ心をほぐれさせていく。

「おはようございます。及川さん。」

せめて、夢の中では。

「愛してます、及川さん。」

俺のものでいてください。

「愛してるよ、トビオ。」

その熱っぽい声に、俺は静かに満たされるのを感じた。



















泣き腫らした目を擦る。

あぁやっぱり。

夢、だった。








優しく輝くその人に、

溢れた愛情
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