HQ!!BL

□blackboard
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青葉城西のユニホームは、白を基調としている。

俺は鏡に映った白い俺を見て、考えにふける。ナルシストきめぇ、と岩ちゃんのいつもの暴言が聞こえた。違うよ、と俺は苦笑した。いつもみたいに文句を言わない俺に、岩ちゃんは舌打ちをした。




ここは青葉城西男子バレーボール部の部室。ここには、誰が何のために置いたのか、全身鏡が置いてあったりする。俺は鏡と向かい合っていたが、見ているのはそこに映ってる俺じゃない。

そこに見える、黒い幻影だ。

影山飛雄。

俺のクソ可愛い、愛しい後輩の姿。

鏡の前に座り込み、その姿に夢中になる。これでは本当にナルシストみたいだけど、この鏡が飛雄を映し出す魔法の鏡のように思えてきて、目が離せなくなってしまう。

岩ちゃんが先にいくぞ、と俺に言う。分かった、と適当に言って、はやくいけと手を振った。岩ちゃんは盛大に舌打ちをして、他の部員も引き連れて、バレーコートへと消えていく。



静かな部室で、俺は改めて鏡と向き合う。

俺はしばらくその飛雄の幻影にみとれていたが、とうとう我慢できずに、おそるおそる、手を伸ばした。

触れたら消えてしまうのが幻影だというのに。

俺が飛雄の指先に触れる。

冷たい、と思った瞬間に、飛雄がにじんでいった。俺が侵食する。

飛雄が、消えてしまう。

俺は必死になって飛雄の瞳を見つめたが、どんどんと薄くなり、やがて消えてしまった。

白い俺の姿だけが、そこに写っていた。

なぜ俺は白いんだ。それは青葉城西に入ったからだ。

なぜ飛雄はあんなにも黒いんだ?それはあいつが青葉城西に来ないで、烏野に入ったからだ。俺から離れていったからだ。

俺は半身を奪われたような痛みを感じた。
それは心が負ったダメージの錯覚だけど。

あぁ、白い。俺が白い。

なんだか無性に腹が立って、そこに置いてあった液体の墨を手に取る。それは部員の誰かの忘れ物だった。

俺はそれを鏡に映る俺へとぶっかけた。

一瞬で黒く染まる俺。

黒、

鏡の向こうに、飛雄がいる気がした。

飛雄、と呼びかけてみるが、反応はない。

もっと、もっと黒く、黒を。

白い俺を塗り潰すように、鏡を黒で覆った。そうするとそれは、黒い板のようになった。

飛雄、また呼んで、出てきておくれ、と強く念じる。

黒から、飛雄がにじみ出てくる。飛雄、急かすように呼ぶと、それはすぐに形になって、飛雄の幻影が現れた。

先ほどよりも明確に、完璧に黒を纏って。

それは幻影だと分かっていても、まるで本当に飛雄のようだった。幻影というより、これは幻覚だ。甘美で夢のような、現実との境目が曖昧で、その分恐ろしく残酷な、幻覚だ。

黒い板に触れて、飛雄に触れた気になる。今度は触れても消えかけたりしない。それにどうしようもなく安堵する俺は、もうとっくに気が触れている。

俺がすりきれていくような錯覚。

確かにいるはずの飛雄に線がかかり、消えていく。

黒い、黒い、飛雄。

白い、白い俺を、真っ黒に塗りつぶして、そこに飛雄の影を描いているんだ。

黒い、黒い飛雄を、真っ白に塗りつぶして、そうすれば俺らは、一つになれるかな。
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