リクエスト

□かわいいものくらぶ
1ページ/5ページ


かわいいものはいいものだ。

と、常々思ってはいるが口に出したことはない。

当たり前だ。こんなゴツゴツしたこれぞ男子、まさに無骨な高校生といわんばかりの俺がそんなことを思っていると知れたら……少なくとも幼なじみはドン引きするだろう。

かわいいものを好きになったきっかけは簡単なもので、俺は今でこそ体格も良く身長も高いどっからどう見ても疑いようのない男だが、小さい頃、まだ幼かったあの頃、俺は女の子と見まごうほどの美少年だったのだ。いや自分で言うのもなんだと思うけれど、事実である。

実際に女の子と間違われることも度々あって、かわいいという言葉を浴びることがたくさんあった。自分の子が誉められるというのは親からするとこの上なく嬉しいもので、調子に乗った両親はなんと俺に女装をさせたのだ。……証拠写真も残ってるよ。まぁなんていうかそれが……思った以上にうまくいってしまって……。親も想像以上の出来栄えに感動してしまい、それからというものの、俺は小学校に入学するちょっと前まで、ちょくちょく女装させられていた。

ふわふわした服に淡い色合いのお洋服。愛らしいぬいぐるみとレースのついたリボン。メルヘンを煮込んで砂糖で味付けしたような"かわいい"の集合体に、物心つく前から囲まれてきた。

幼い頃に植え付けられたそのイメージは絶大で、かわいいものに彩られた幼少期の影響は男子高校生となった今でもバッチリと現れている。

つまるところかわいいものラブ!かわいいものにきゅんときちゃう!な、立派なオトメンの誕生である。










「はぁ……かわいい。」

ぽつりと漏らした独り言。当然周りに人なんかいないよ。いたらこんなこと言えないじゃん。

俺の手元にはかわいくラッピングされたクッキーが。俺の容姿を好んでくれている女の子からのプレゼントだ。

ふんわりとした甘い香りをただよわせているピンクの箱はレースの縁取りがプリントされていてかわいいながらも華やかな雰囲気まである。箱を綴じているリボンをみていても、細くて光沢のある生地は、色とりどりに束ねられてブーケみたい。

思わずまたほぅと息を吐く。かわいいなぁと感心しきりだ。中身のクッキーもマーブルもようで本当にかわいい。思わず食べちゃいたいくらい。人から貰ったものをそう易々と食べるんじゃねぇとお母さんみたいな幼なじみには毎度叱責されるのだけど。そんなの無理な話だよ!だって、こんなにかわいいのに!

大事に大事に鞄の奥へとしまって、帰り道の途中で箱が潰れてしまいませんようにと思いながら俺は機嫌良く家路へとついたのだった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ