Eyes On Me

□その9
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人は欲深い

鬼もきっと欲深い。

私はあの後 熱がさがってからも 千景様に怒られることはなかったが 代わりに天霧さんにこってり絞られた。

「あなたを探すのに 風間がどれだけ苦労したか!」

と珍しく天霧さんは感情をむき出しに説教した。

天霧さんがここまで言うのだから…本当に苦労して探してくれたんだろう…。

申しわけない気持ち。だけど…千景様の優しさを感じた。

千景様は 意地悪で 傲慢な以上に ずっと ずっと前から 優しかったんだ。

私はそんな千景様が ずっと好きで…。

私の好きな人って…一さん?それとも…千景様?

一度鬼の里を追放されていた 私なんかが千景様を好きになることも まして他の男にも好意をもってるなんて…許されるはずないのに

どうして こんなに欲深いんだろう。

近頃 屋敷内でささやかれる

『千景様は雪村の娘を娶るらしい』

という噂。

わかってる。千鶴ちゃんの血筋のほうが千景様にふさわしいこと。

以前『一さんの傍にいるから』と嫉妬したのに 今度は『千景様のお嫁さん候補だから』とまた嫉妬しそうになってる自分が醜いこと。

かつて『よめになってほしい』と言った千景様の言葉を 忘れて 自ら反故にしてしまったこと。


こんな思い……もう一度 忘れなくっちゃ。
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