Eyes On Me
□その5
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千景様は今日は朝早く出かけたようで、私が起きたときにはもう屋敷に姿がなかった。
なんやかんやと言って いつも朝餉は一緒に取っていたから、一人での朝餉はちょっとさみしい。
とはいえ、千景様が留守のおかげで一さんに会えるのだ。
私はいつもよりちょっとだけ…めかしこんで屋敷を後にした。
「一さんっ!」
少し早く茶店についたのだが 予想外にもすでに一さんは先に着いていたらしい。
呼びかければ 無言で微笑み返してくれる一さん
こんな些細なことがうれしい。
一さんの座る卓に近づくと…
「…あれ?あなたは…」
一さんの隣に誰か座っている。
昨日見かけた桃色の着物の…
「はじめまして。雪村と申します。」
少年は立ち上がり お辞儀をする。
慌てて私も挨拶を返す
「苗字名前です。」
それにしても ゆきむら…どこかで聞いたことあるような…でもこの人とは昨日が初対面だし…。
そもそもどうして雪村さんは一さんと一緒にここに?
思案していると 一さんが説明を入れてくれた
「雪村は、隊士ではないがわけあって屯所で暮らしている。
普段あまり外に出してやれていないのでな、ここに連れてきた。」
なるほど…私も外に出れない不便さはわかってるつもりだ…だけど…一さんと二人じゃないのはちょっと残念だな…。
そんな気持ちが顔にでてしまったのかもしれない 雪村さんは
「あ…あの 私 久しぶりに会うお二人の邪魔になってはいけませんし やっぱり…」
そう言って席を立とうとする。ん…?
「え、あの…あなた もしかして…女の子?」
雪村さんは静かに頷く。
雪村さんに感じていた違和感はきっとこれだったんだ… と私は結論付ける。