Eyes On Me

□その3
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父と母は里に帰ったが 千景様に言われた通り、私は京に残っている。

一緒に里に帰れなかったことに 両親は残念そうであったが、里に帰還を許してくれた千景様の希望ならば仕方がない。と納得してくれた。

何より…私も京に残っていたかったのだから。

千景様と天霧様。そして他に数人の従者と共に京の屋敷に住んでいる。

家事をさせるために私を残したのかと思っていたが、家事をしようとすると「それは従者の仕事ですから…」と天霧さんに止められる。

「けれど…なにもしないというのは…」

ちょっと前まで 里から追放されていた身なのに、何もしないで屋敷に置いてもらおうと言うほど 図々しい性格はしていない。

「名前さんにお願いしたいことは2つです。人間の生活に我々がなじめるよう助言をしていただくことと、…風間の相手を。」

そう言う天霧さんは少し申し訳なさそうだ。

ここに来て数日で確信した。

千景様は横暴だ。横柄だ。傲慢だ。

頭領としては優秀らしいけど、個人としては問題大アリだと思う。

誰に対しても尊大な態度をとっているが 私に対してとりわけ不条理だと思う。 私がいわゆる幼馴染だから…だろうか。

ここ数日で いくらか昔の記憶の断片がよみがえった。
無理な命令をされる私。困らされる私…

それを総括すると、どうも昔私は 千景様に「遊んでもらった」というよりも「こきつかわれていた」あるいは「私で遊ばれていた」。


再会した日の接吻だって。大した意味はないんだろう。


「そんなに暇ならば 俺につきあえ。」

出た。暴君。

「お前に拒否する権利などな「はいはい、行きますよ」

千景様の言葉をさえぎって返事をする。仕えている相手に対してこの態度はよくないのが普通。

だけど

「頭領の言葉くらい最後まできいたらどうだ…?」

「頭領が余計な口の動きをしなくていいように助けてあげただけよ。」

「ふん…詭弁だな。」

そういう彼に怒りは感じられない。むしろどこか楽しんでいるように見える。

千景様の性格は やはり理解しきれない。
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