※キルクラシリアス死ネタ

ありがとう


あんたは華みたいな人だった。

あんなに華麗で、華奢で、美しくて、なのに、くしゃっとしたら潰してしまいそうで…
でも、そこにいつも輪として咲いている華。

俺はその華をいつも摘みたがっていた。でも、実際に摘んでしまったら華の命も元気もなくなる。そんなこと知ってるわけで、
だから、いつもその華のところにいって、眺めて、眼にその美しさを焼き付けていた。

俺だけの華。俺のための華。他のやつらになんて見せたくない。

でも、現実はそういかなくて、華は誰からも愛される。


俺はそれが嫌だった。


でも、華は人間よりも長くは生きられないわけで……

ーーーーーーーーー

「……私は……もう長くはないらしい」

病院の個室の中。あんたの声だけが響いた。

「…………っ」

「……今日、医者に言われたよ。」

「……うそ…だろ?」

「………」

俺の恋人、クラピカは昔から病弱で、小さな頃から、毎日をこの病院のベッドで過ごしていた。

俺がこいつに会ったのも病院。

たまたま足に怪我をしたため、病院に行ったら、病院の中庭で出会った。

一目惚れだった。
……だって、そうだろ?
こんなに華麗で、華奢で、美しくて、でもどこか儚しげで…

初めて会ったのは中庭のベンチで、初めて声をかけたのはあんただったっけ。

たまたまだった。病院の中があまりにもつまらなくて、少し探検気分で中庭に行っただけだった。

そしたら、中庭のベンチで本を読んでいる人を見かけた。

それがクラピカだった。

そのまま見とれていたら「何か私に用か?」って
今思うと、このときからほんとに変わんないよなクラピカは

その日から俺は病院に通いつめて、クラピカに会いに行った。

何日か後に告白したのも俺だった。
歳も違うし、一回断られたよな。
でも諦めずに何回も会いに行って、何回も告白して……やっと…付き合えた……。


「……キルア……私と別れてくれ。」

「嫌だ。」

「……お願いだ…頼む。」

「嫌だ。」

「……わがままを言うなっ!キルアっ!」

「嫌だったら嫌だっ!!!!!!」

「……キルアっ!!!!!!…」

ーパンッー

頬が痛くなった。
それでも構わずにクラピカを強く抱き締める。

「……絶対に…離すもんか…」

「……キル…」

「…俺は…あんたの髪が無くなっても、何も喋れなくなっても、何も聞こえなくなっても、俺のことを忘れてしまったとしても………絶対に離さない……」

「……わた、…私は……お前に幸せになってほしいだけなんだ………私のせいで……お前が不幸になることだけは……」

「…じゃあ、尚更一緒にいてよ…」

俺はクラピカを離して、眼を見て言った。クラピカは泣いていた。

「俺はあんたがいないと笑えないよ」

「……ほ、…ほんとに…後悔しないか?」

「あたりまえじゃん」

「……ありがとう…キルア…」

あんたは笑った。その涙が、まるで華の朝露のようで……

……俺は一生この華のそばにいたい。

素直にそう思えた。

誰にも渡したくない。俺だけの華。

それから俺は毎日病院に通った。
理由はクラピカが心配だからだ。今クラピカがなっている病気は原因不明で、どんなことが起こるのかすらわからない。いつ死ぬのかもわからない。

本当は泊まってでも一緒にいたかったが、それはクラピカにダメだと言われた。

最初のうちはなんともなかった。
普通に話して、普通に笑って、普通に過ごしてた。それが何日も続いた。俺は安心した。

あんたの笑顔が好きだった。
それだけなんだ。

ある日、俺が病室にいくとクラピカの様子がおかしくなっていた。
おどおどというか、びくびくというか……何かに怯えてる感じ。

「……あ、あぁキルアか。」

俺に気づいたのは俺が何回も声をかけたのち。

「……クラピカ?」

「なんだ?」

「…どうしたの?」

「……」

しばらくの沈黙が終わり、クラピカが口を開いた。

「……私…髪の毛がなくなるんだ」

「……」

「今日、新しい薬を処方してもらった。でも、その薬には副作用があってだな……」

クラピカの碧色の眼から大粒の涙がこぼれた。その瞬間、俺はクラピカを抱き締めた。

「…キル…」

「…怖がらなくても大丈夫。そんなの、すぐになおったら元通りになるよ。」

「でっ、……でも、…キルアだって……私の黄色の髪…好きだって…」

「俺は黄色の髪の毛が好きなんじゃなくて、…クラピカが好きなんだよ?髪の毛がなくなってもクラピカはクラピカでしょ?」

「……キルア……」

「……大丈夫だよ。大丈夫…」

俺はクラピカを抱き締めながら大丈夫だと唱える。

「……有難う…キルア」

俺はその後、クラピカにニット帽を買った。
これで、少しでも気にならずにいれるだろうか。


次の日

クラピカはニット帽を被っていた。
顔しか見えなくなったクラピカを見て、改めてクラピカの顔の美しさを実感した。




その日、クラピカの髪がなくなった。




そして、別な日

「……クラピカ、ちゃんと食べなよ。まだ、全然残ってるじゃん。」

「……ちょっと、今日は食欲がなくてな……」

クラピカはだんだん食欲がなくなって、痩せ細っていった。

「……ちゃんと食べないと、肌にも悪くなるよ?」

「……明日からちゃんと食べるよ。」

毎日毎日そういってたよな、あんたは。





その日、クラピカの食欲がなくなった。


そして、しばらくして…

「……クラピカーっ!いるー?」

「……はっ、…はい…ここにおりますが…」

「クスッ……なにそれ」

俺は笑った。その後の一言を聞く前は

「…すみませんが……ど、……どちら様ですか?」

「……え?」

俺は時がとまった感覚に陥った。

「……どちら様って……俺だよ?クラピカ?なに冗談言って……」

「……すみません、私たちは…何処かでお逢いしていましたか?…そういった経験が思い付かないのですが……」

「……」

俺はとっさに理解した。

記憶が消えたのだということを



それからのことはあまり覚えていない。
もしかしたら、俺はムキになって、クラピカに必死に訴えていたかもしれない。

「…俺だよっ!!わかるだろ?!嘘だろ?!」てな感じに…

確か、その後クラピカに発作が起きて、クラピカは自らナースコールのボタンを押した 。
その後、俺の必死な訴えはナースにとめられた。




「……すみませんがどちら様ですか?」

「……俺はキルア。あんたの恋人だよ。」


それから毎日が自己紹介だった。

一日、一日の記憶が覚えられないらしい。

あの日、俺と過ごした記憶のみが全てクラピカから消えたことをしった後、俺は嘆いた。
もう、共に記憶を分かち合ったあの頃のクラピカはいない。

俺とキスしたり、抱き締め合ったり、笑いあったり、涙をぬぐってやったりした思い出は、もうなにもないんだ。


でも、それでも、よかった。

俺は華がそばにいてくれるだけでいい。その美しさを愛でているだけで……




その日、クラピカの記憶が消えた。




徐々にクラピカの容体は悪くなっていった。

ただでさえ、食べなくなってしまったのに、やっと飲み込んだものさえ、吐いてしまう。

クラピカは点滴だけとなった。

そして、発作の嵐だった。

毎日、毎回、何回も発作がおき、ナースコールをかけた。




華は花びらが散っていき、だんだんとしおれていく。




クラピカは とうとう、呼吸までままならなくなっていった。


ピッ……ピッ……





機械音のするなか、俺は一人で話した。

「ねぇ、クラピカ。
初めて会ったのは中庭のベンチで、初めて声をかけたのはあんただったのは覚えてる…?
その後、あんたにみとれた俺はあんたしかみてなかった。
他の女に言い寄られたりもされたけど、それでも俺の頭はあの日からあんたで埋め尽くされてたんだぞ?あんたに会いたくて、あんたの声が聞きたくて、毎日、毎日そう思ってたんだ。あんたからしてみたら俺はまだまだ子供だし、悪ガキだけどさ、
あんたに会って、初めてこう思えた。
あんたに会って、初めてこの感情を知った。だからさ……もし、あんたがもうこの世界で生きることができなくて、黄泉の国にいこうとしてるなら、俺にこれだけ、これだけ言わせてよ」

眼から一滴の涙が溢れた。

「……ありが……「キル……ア……」」

消え入りそうな声で、か細い声が聞こえた。

クラピカが俺の名前を呼んだ。


クラピカが俺の名前を呼んだのだ。

クラピカが…記憶が消えたクラピカが……俺の名前を……

「……え、クラ……「……私の方こそずっと、いいたかった…んだ」」

「……どんな私でもキルアは支えてくれた。……こんなになってまで、…愛してくれた。……本当に、…本当に、…」

「……クラピカっ!!俺の方こそ…いつも、いつも俺のそばにいてくれて……」

『ありがとう』

ピー……


クラピカは笑顔で、安らかに眠りについた。

「ありがとう。俺を…支えてくれたのは…あんたなんだよ……」






俺の眼から大粒の涙が溢れ出した。




End




ヒマラヤ山脈さん、遅くなったあげくこんな駄文になってしまい、
すみません、シリアスなんかじゃないですね。もはや、パロですねこれ。すみません、本当にすみません。土下座してお詫び申し上げます。orz

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