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□笑った君が
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笑った君が

グリードアイランドを一時抜けてきた俺は、ある 人とこっそり会う約束をしていた。
笑った君が
ここはヨークシンシティの外れ。華やかなヨーク シンシティとは裏腹に、静かでイヌフグリやタン ポポが咲き乱れる小さな丘。
キルアにとって大切な場所だった。クラピカに とっても大切な場所かもしれない。
「キルアっハアハア。待たせたな!」
久し振りに見たクラピカは、また痩せたけどさら にきれいになった。
「よく分かったね。俺が誘った場所」 突然だった。
『あそこで待ってるから。』
「そんな事直ぐに分かる。お前の待ち合わせ場所 はいつもここではないか。」 「あっ!そっか。けどさあんた仕事どお?大丈 夫?」
キルアはスラッと聞いた。この場所なら何でも聞 けるような気がした。
この場所はクラピカの全てを聞けた場 所、そしてキルアが泣いたクラピカに告白した場 所だったからー。
「ああ。すまない。それに今日は何のようだ?」
「実はさ、俺遊園地行きたいんだよね。」 遊園地。
「聞いたことはあるが、行ってみたことは無い な。でもここの近くには無いな。」
「うん。だからさ。」
キルアはひょいとクラピカを抱えた。
「,,,,,,おい。私は歩けるぞ?」
クラピカはちょっと怒った顔で言った。
「嘘でしょ。だってさ分かるよ。脚、怪我して る。念もあんまり使わない方が良いでしょ?」
クラピカは苦虫を噛んだような顔をしてため息を つき、抵抗を止めた。
「じゃ、行こっか。」
「おい!人前に出る積もりか,,,,,,(照)」
「大丈夫。だから目瞑ってて。」
キルアは柔らかに微笑むと、クラピカの目蓋にキ スした。
クラピカは目を瞑った。瞑った瞬間、キ ルアの脚を蹴る音と共にフワッと身体が浮いた。 こっそり目を開けると、傍観者と化している民間 人が蟻のような小ささに見えた。
「さ、着いたよ。クラピカ。」
「もう着いたのか?」
「おっと,,,,,,まだ目瞑ってて。俺がエスコートし たいの。」
キルアは白く細いクラピカの手を優しく握ると、 歩き出した。
「んじゃあ目開けて。クラピカと俺の貸し切り遊 園地に着いたよ。」
クラピカの目には嬉しそうに笑うキルアと、誰も いない小さな遊園地がそこにあった。
「何故誰も居ないのだ?従業員も居ないじゃない か。」
「まあまあ。俺と最初はジェットコースターだ ぜ。」
キルアはでかいジェットコースターを指差した。
「え,,,,,,これは飾りじゃ無いのか?」
クラピカは青ざめた顔をした。
キルアはニヤリと 笑った。
「さ、乗るぜ。ってクラピカ俺の隣に乗ると、な にするか分かんないぜ?」
「良いだろう。」
発車ベルが鳴った。カタンコトン,,,,,, カタンコトン,,,,,,二人が乗ったジェットコース
ターは坂のギリギリの所で止まる。 「キルアっ,,,,,,」
「何?」
「キスしてくれないか?」
この一言にキルアは火がついた。
ブルブル震えるクラピカの顎を無理矢理掴むと、
深く口付ける。
顎伝い落ちるものはクラピカの涙 か。
その時だった。
「んんんんーーっっっ?!!!」
二人が声を出したのだろうか?
フワッと身体が浮いたと思うと、一緒に落ちてい く。
「うわああああ!」
「助けてくれっうわああああ,,,,,,」
,,,,,,

五分後二人はベンチでぐったりとしていた。
「クラピカ,,,,,,目赤くなってたじゃん。」
「お前こそ涙目だったじゃないか。」
二人は互いに顔を見あうと笑った。
「センキュ。」
「え,,,,,,?」
「来てくれて。俺とあんたはこれからまた逢えね えからさ。来ときたかった。」
「,,,,,,そうか。」
二人ともこれ以上見つかる言葉が無かった。
「キルアっ,,,,,,!私達は,,,,,,またっ!」
その時だった。
クラピカの身体が消えて行く。
「やはり,,,,,,念だったんだな。」
「うん。クラピカ。これ以上言っちゃ駄目。俺、 クラピカと一緒にずーーっとここにいたくなっ ちゃうし。」
キルアは目をふせ、口許で笑うと声を出さずに紡 いだ。
アイシテルダカラワラッテテ とー。
クラピカは慌てて目を手で拭うと、微笑んだ。そ れはそれは綺麗な笑顔だった。
キルアは笑ってもう胸までしかないクラピカに手 を降った。
そうして、何にもない荒野と隣にはもういない恋 人を見て、呟いた。
「いつかまた俺たちは会えるか?でしょう。クラ ピカ。」
そんなの決まったも同然だ。 だって俺たちは、本当は、脆くて崩れやすいんだ から。
End ーーーーーーーーーーー
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