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□二人でおでかけする話
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何故かさっきから時計ばかりを気にしてしまう。
「…あと、五分……」
今までにこの五分がこんなに長く感じたことなんて、あっただろうか…
今日は付き合ってからはじめての二人で出かける日。
事の発端はキルアの読んでた雑誌だ。
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「………」
「…クラピカっ」
「なんだ?」
「これみろよっ!」
「これは…」
「新しいケーキ屋さんが近くにオープンしたんだってさ!!」
「へぇー……美味しそうだな」
「………なぁ、クラピカ………今週の日曜ってさ、……あいてる?」
「…あぁ、予定はない。」
「じゃあさっ!!その日にさ、ここ一緒に行かないっ?」
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正直、びっくりした。
まさか、あのキルアと恋人同士になれて、二人っきりで出掛ける、なんてことができるなんて…
「…ごめんっ!!」
五分後、キルアが走って待ち合わせ場所に到着。
「……もしかして、クラピカ、約束の時間の15分前からいた?」
ーびくっー
ニヤニヤしながら聞いてくる。銀髪の美少年。
「おっ、ビンゴ?」
「うっ、うるさいっ!たっ、たまたま早く来てしまっただけだっ!//」
我ながら苦しいいいわけだ……
そんな私をみて、キルアはくすくすと笑う。
「そんなに楽しみだったの?」
「……甘いものは嫌いじゃないからな」
「なにそれ」
隣でまだ笑っている少年と例のケーキ屋さんへと向かった。
私はチーズケーキ、キルアはイチゴたっぷりのショートケーキを頼み、二人で食べた。
「………」
ケーキを食べているとキルアがじっとこっちを見てきた。
「…キルア?」
「いや、チーズケーキも美味しそうだなぁ…と」
どうやら、私ではなくチーズケーキを見ていたようだ。
全く、キルアはやっぱり甘党なんだな。
「キルア、私のも食べるか?」
そう言うと、目を輝かせて
「いいの?!」
と喜んだ。
「あぁ」
そう言うと、キルアは口を開けて
顔をこちらに向けた。
「……あーん」
「……?!////」
やっと意味がわかった
「じっ、自分で食べろっ////」
「やだ」
ふいにフォークを持っている方の腕を強引に引っ張られ、彼の口元へと持っていかれる。
「…チーズケーキもんまいじゃん…」
彼が血色のよい唇から赤い舌をペロリと出すと、とたんに恥ずかしくなってきた。
「…きっ、……キル…んっ…」
彼の名前を呼んでいる最中に口のなかに甘酸っぱい味と甘いクリームの味が染み渡る。
……甘い味が口のなかいっぱいになり、何をされたのかということがわかり、また恥ずかしくなってくる。
「……んまいだろ?」
先程私の口に入れたフォークを持っていたずらそうに笑うキルア。
……恥ずかしさでいっぱいの私にはもう、怒るという感情表現ができず、無言でうなずき、残りのケーキを食べた。
「…噂通りの味だったなー…クラピカっ!また来ようよっ」
「………」
「あれ?美味しくなかった?」
「………」
「ねぇーきーてる?」
「………」
あえて、なにも言わず、キルアの方を向きもしない私にキルアはひたすら呼び掛ける。
「……わかったよ、強引にして悪かったな」
何回か呼び掛けたあとむすっとキルアもあちらを向いてしまった……さすがに怒らせてしまったようだ。
「……キル…」
私が呼び掛けようとすると、それを感じ取ったのか、キルアは急に振り向いた。
「やっと、こっち向いた」
キルアがにこっと笑った瞬間に一気に顔が熱くなる。
今日も私は自分よりも年下の彼氏に胸が高鳴っているようだ。