Short(log)
□片思い症候群
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(仗助視点)
ナマエとの出会いは、少し奇妙な出会いだったのかもしれない
俺がある用事で隣町まで行くため、電車に乗った時、ナマエが乗っていた、俺は特に暇潰しの物を持っていなかったので、ボーッと移り変わる風景を見ていた
ふと、窓に反射した部分に目を向けた時、俺の後ろにいるナマエの様子が変だった事に気が付いた
やたら後ろのサラリーマンも近い、それにナマエはチラチラと助けを求めるように周りの人物を見ている
その時、ナマエが俺の方を見たのだ、俺もナマエを見ていたので必然と目が合う
ナマエの困惑と動揺、恐怖等様々な感情がこもった目を見た時、俺は行動に移っていた
「おいテメェ、なにしてんだ」
そう言いながら、サラリーマンの腕を掴む、すると目を見開いて汗をかき出すサラリーマン
「なにって……なにも……」
「嘘つくんじゃあねぇ、ならなんでこんなにこの子に近付いてんだ」
「近付いてるって……思い込みじゃ……」
「この子は明らかに嫌がってんだろうが」
掴んでいる手に力を入れると、ミシミシと鈍い音がする
俺達の騒ぎを聞いてか、周りの人達がざわつく、それでもお構いなしにサラリーマンを責め立てる
そして、ようやく騒ぎを聞きつけ、駅員が俺達の所にやってきた
「あの……ありがとうございました……!!」
あれから俺達はすぐ駅に降ろされ、事情を聞かれた、もちろんナマエも一緒に
ナマエが怯えているのか少し震えながら今までほぼ毎日このサラリーマンに嫌な事をされていたと、淡々と答えた
俺は少しでも怖さを和らげようと、ゆっくりとナマエの手を握り続けた、そして、結構、サラリーマンはもっと詳しく調べるため警察署へ連れて行かれた
俺は少し時間がかかったが用事を早く済ませようともう一度電車に乗ろうとした時、ナマエに礼を言われた
「いや、別に大丈夫っスよ」
「本当に……ありがとうございます……」
「そんな今にも泣きそうな顔しないで下さいって……あー……これからは気を付けるんっスよ」
「はい……あ……あの……私、ナマエと言います……貴方は……」
「ん?東方仗助って言います」
「東方さん!!本当にありがとうございました!!」
「わぁぁぁぁ!!もう頭下げなくていいっスから!!」
初めは、少し変わった人だと思った、礼を言うのは確かにいいけれどナマエの場合は言い過ぎだった
ナマエは杜王町に住んでいる事、大学の通学で電車を使っている事が話しているうちに分かった
それから、ナマエがどうしてもお礼をしたいという事でカフェ・ドゥ・マゴに来て飲み物を何杯か奢ってもらった
そんな事もありながら、ナマエと俺はもう敬語なんてなくなる程仲良くなっていった
学校の帰りによく会ったり、休日も時々遊んだりしていた、そして今日もいつも通りの休日の筈だった
「仗助、どうしたの?なんかボーっとしているけど……」
「な……なんでもねぇ」
ナマエと出会った時のことを長々と思い出していると、ナマエが急に呼んできたので肩をビクつかせてしまったがそのまま甘めのココアを飲む
今日も俺達はカフェ・ドゥ・マゴで適当に駄弁るのだ
ふぅ……と、一息ついた時、ナマエが急に外の景色を見始めた
「……?どうかしたのかよ」
ナマエに続き俺もふと、外の景色を見てみる、するとそこには身長が高いためか物凄く目立つ承太郎さんがいた
確か、ナマエと承太郎さんは知り合いではなかった筈……でも何故かナマエは承太郎さんを見ている
疑問に思い、ボーッと承太郎さんを見ているナマエに聞いてみる事にした
「なぁ、ナマエ」
「…あ!!……な…何?」
「オメェ、承太郎さんの事知ってたっけ?」
「承太郎さん……?誰の事?」
「お前がさっき見ていた背の高い帽子かぶった人だよ」
ナマエに承太郎さんの特徴を言うと、ナマエは視線をまた外にいる承太郎さんに移して
「承太郎……さん……」
と、名前を呟いた、そんなナマエを見て思わず俺は、ナマエはきっと承太郎さんの事を好いているのではないかと思ってしまった
その直後、ズキズキと痛む感じがした、なにか無償にイライラしてしまう、まるで髪の毛を馬鹿にされた時のような感覚だ
「……悪ィ、ちょっと今日は帰るわ」
「えっ!?ちょっと…仗助……」
ナマエにそう言い残して、ココアの代金を机の上に置いて、俺はカフェ・ドゥ・マゴを出た
承太郎さんは俺の憧れのような存在だ、無敵のスタンドのスタープラチナも強い
でも俺は……どうしてもナマエにあの顔をさせている承太郎さんを少しだけ恨んでしまった
ナマエはなんで俺の方を向いてくれないのかと、正直な所、俺はナマエが好きだ
話をしているうち、段々とナマエと言う一人の人物がとても大切なものになっていた
だからこんな子供のような嫉妬をしてしまうのだろう……