Short(log)

□ジョセフ誕記念
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波紋の修行で疲れた身体を癒すため、のんびりと寝ていると、いきなり全身に重石が乗ったような衝撃が来た

一気に覚醒した頭が、混乱している中、もしかすると師範代が荒っぽく起こしたのかと思ったが少し違う気がした


「ん?ん?」


思わずそう呟きながら目を開けてキョロキョロしていると、丁度お腹の中央にデカい人が乗っていた

妙にハネている茶色の髪の毛を見て、ようやく私はジョセフだと理解した


「ジョセフ……重い……」

「ナマエ!!起きたのねン」

「起きたから……死ぬ……退いて」


私が声をかけると、ジョセフは心底楽しそうにそう言ってきた、そんなジョセフを少しでも退かそうと主に頭を押す

しかし、頬がどうなろうがジョセフはニコニコしながら私の方を見ていた

なにかあるのかと思ったが、今日……九月二十七日には特に何もなかった気がする

それでもジョセフはニコニコと私の方を期待を込めた目で見てくる、こんなジョセフは夕食がフライドチキンだった時以来だ


「……ナマエ〜」

「何」

「……なんか俺に言うことない〜?」

「……無い」

「…………」


寝起きのためか、少し苛立ちながらジョセフに言うと、少しショックを受けたような顔をしてジョセフはゆっくりと私の上から退いた

何がしたいのかさっぱりだったが、ジョセフの雰囲気が少し悲しんでいる様だった、そして私が何か言う前にジョセフは部屋を出て行ってしまった

疑問に思いながらももう一度寝るために私はベッドに入った

次の日も修行だったが、今日は午前だけだったので昨日より楽だ


「あ!!ナマエ、丁度よかった!!後でこれ運んでくれる?」

「ん?いいけど?何運ぶのスージー?」


修行終わりにシャワーを浴びようと廊下を歩いているとスージーが台所から声を掛けてきた

スージーの頼み事を二つ返事で答えて、シャワーを浴びる前に何を運ぶのか聞いてみた


「フフッ……それは内緒、先にシャワー浴びていいよ」

「気になるけど……お言葉に甘えて、先に浴びてくるよ」


スージーの言葉に甘えて先にシャワールームに向かう、いつもより豪華な昼食だったが、やはり今日は何かあるのかと考えてしまう

そんな事を考えながら、汗をシャワーで流す

髪の毛を乾かしたいところだが、少しでも早くスージーの元に向かいたい為、首にタオルを掛けて済ませる


「スージー、お待たせ」

「おかえりナマエ!!じゃあこれお願い」

「うん……ん?これフライドチキンじゃん、あー……だからジョセフ夜中に来たんだ」


スージーがいる台所に行くと、運んで欲しいと頼まれた皿には少し大きめのフライドチキンが乗っていた

それを見て、思わず夜中の事を思い出し呟いた時、スージーが急に持っていたスプーンを落とした


「うわッ!!スージー何してるの!?」

「ナマエ……もしかして、知らないの?」

「何が?と言うかそのスプーン、シーザーのじゃない?」


スージーの言葉が引っかかったが、まずは床に落ちてしまったシーザーのスプーンを救出する

丁度、スプーンを洗い終わった時、スージーが急に私の肩を掴んできた


「ナマエ……今日何の日かわかる?」

「え?何急に……あ、もしかしてスピードワゴンさんの顔の傷が付いた日?」

「違うよ!!そもそもスピードワゴンさんの顔の傷が付いた日って!!殆んどどうでもいい日じゃない!!」

「……う、うん、そうだね」


スージーの焦ったような口調に少し怖気付きながらもスージーの言葉に頷くと、スージーは一度軽く溜め息をついて


「今日はね……ジョセフの誕生日よ」


と、ある意味衝撃的な言葉を発した、ジョセフの誕生日だと聞いて夜中のジョセフの行動もなんとなく分かる

すると、スージーが急に私を廊下の方に押し出して、ポンポンと背中を叩きながら


「多分、ジョセフなら部屋だから、謝るついでに祝ってあげて!!」


と、ウインクしながら言ってきた、思わず可愛いと言いそうになったが堪える

そして、スージーの言う通り私はジョセフの部屋に向かった

ジョセフはスージーの言う通り部屋にいた、少し顔を覗かせると、気配を感じたのかジョセフがこちらを見た


「ナマエ……?」


ジョセフがまだ少しだけ不機嫌そうに私の名前を呼んだ、そして何か用かと言いながら私の前に来た


「ジョセフ……えっと……何と言うか……」

「……ん?」


本人を前にするとなんか照れ臭いと言うか恥ずかしいというか、そんな感情が出てくるが意を決して口を開く


「その……今更だけど誕生日おめでとう」


そう言ったのは良いが、なんとなくジョセフの顔を見れなくなってしまい、後ろを向いてしまう、このまま帰ってもいいかな

そんな事を思っていると、ジョセフは私の背後でクスクスと笑っていた


「ようやく言ってくれたなナマエ」


そう言ってジョセフは私の頭を少し乱暴に撫でた、シャワーを浴びたばかりだから少し湿った髪の毛がぐしゃぐしゃになってしまった

ジョセフに文句を言おうと振り向いた時、急に後ろから何かに押された気がした

慌てて背中を見ると、ジョセフのクラッカーヴォレイが絡まっていた


「ジョセフゥゥ!?なんでクラッカーヴォレイが飛んでくるの!?」

「オーノーッ!!ついさっきまで練習してたの忘れてたぜ!!」


クラッカーヴォレイがブーメランとして返ってくるのは投げた本人も驚きだったようで、クラッカーヴォレイは私とジョセフを巻き込んで絡まった

さっきまで見る事が出来なかったジョセフの顔が目の前にあり、なんとなくまた別の方を向こうとして顔を動かすと、シーザーが見えた

それから二人でシーザーに助けを頼んだ、シーザーは半分呆れながらクラッカーヴォレイを解いてくれた

解いてもらっている時、私は密かにもう一度ジョセフにお祝いの言葉を言った

少しお調子者だけど、頼れる私達のジョセフ、生まれてきてくれてありがとう

予定ではそう伝えるはずだったと言うことはジョセフには内緒だ
 

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