Short(log)

□非日常に飛び込もう
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「臨也ァァァ!!」

「ハハハッ!!シズちゃん、その子死にそうだよ?」

「黙れ!!元はと言えばテメェが!!」

「んじゃ、俺とその子は退散するね、これ以上シズちゃんが標識振り回したら、その子マジでヤバいから」

「テメッ!!待ちやがれェェ!!いィィィざァァァやァァァ!!!!」


ああ、なんでこんなにうるさい所に私はいるのだろう……

ただ、田舎の婆ちゃんの送り物を取り返しに来ただけなのに……

元はと言えば、歌舞伎町と池袋、間違えた婆ちゃんのせいだ……たかが海苔の佃煮…取りにこなきゃよかった……

でも、婆ちゃんの海苔の佃煮はうまいんだよな……

そんな事を思いながら、私は気を失った、最後に見えたのは何が楽しいのかニコニコ笑っている二十代ぐらいの男の人の着ているファーコートの下に着ているTシャツの文字、"人ラヴ"とか言う意味不明な文字だった




「いくらシズちゃんを撒くためとは言え、無理させちゃったかな?」


誰?

なにその馬鹿にしたような声……


「て言うか、この子……見た事ないな……どこから来たんだろ」


だから誰……?私は海苔の佃煮のために池袋に来て……それで……


「趣味の悪い、人ラヴTシャツ見て…」

「……趣味悪くて悪かったね」


薄目を開けて、呟いた時返ってくる筈の無い返事が来た

少し驚き、目を開けると


「やぁ、調子どう?」

「……ぎゃぁぁぁぁぁ!?」


明らかに不審者な男が、私を覗き込んでいた


「ちょっと、ちょっと、落ち着いて……君をここまで運んだのは俺だよ?」

「……えぇ……貴方が?」

「なにその態度……まぁ、いいや」


不審者さんは、よく覚えてないがあのうるさい所から助け出してくれたのだろう


「あの……ありがとうございました?」

「なんで疑問形?」

「いや、助け出してくれたんですよね?あの……うるさい所から」


まだそうと決まったわけではないのでそう言うと、不審者さんはポカンとしてから


「ブッ!!……ククククッ!!……本当に……そう思ってる?クククッ……」


と、吹き出してから聞き返してきた

なぜ笑う?そしてなぜ室内なのにコートを着てる?なぜニヤニヤしてる?

様々な疑問が浮かんだが、後で言えばいいと思い、とりあえず


「まぁ、そうだと……違います?」


と、言ってみた

すると、不審者さんは


「フフフッ!!…ハハハッ!!」


と、高笑いを始めた

そして、私が引いているのにそのまま笑い続け、少しして


「あーあ……違うよ、その逆!!俺が巻き込んで、勝手に運んだだけ」


と、ドヤ顔で言ってきた


「……婆ちゃんの海苔の佃煮は?」

「海苔の佃煮!?そっちなんだ!!……まぁ、ここにあるよ…袋いっぱいに、重かったよ……」


とりあえず海苔の佃煮の安全を確認した、そして本題に移る


「巻き込んだってどういう事ですか?返答次第ではこの海苔の佃煮をその暑っ苦しいコートにぶちまけますよ」


若干、いや、確実に脅しながらそう言う、もちろん海苔の佃煮の瓶の蓋を開けるのを忘れずに

すると、不審者さんは全く怯える表情を見せずに


「その場にポカーンと使えそうな人が居たから」


と、答えてきた

私は不審者さんのドヤ顔と声色、暑っ苦しい格好等全てにイラついた


「あっれぇ?もしかして、君は池袋に来たのは初めて?だから知らなかったのか……普通の人間は、俺とシズちゃんの喧嘩を見たら逃げ出すよ?巻き込まれたくないからね」


不審者さんは私のイライラも気にせずにペラペラと言葉を続ける


「ふーん……なるほど、住まいは歌舞伎町か、名前は……ナマエさんか…通りで見た事なかったのか」

「えっ!?ちょっ、それ私の免許証!!返してください不審者さん!!」


イライラから、顔を伏せていると不審者さんの言葉に驚いた

私の情報を的確に当てていったからだ、慌てて顔を上げると私の免許証が不審者さんの手の中にあった

個人情報を守るため、不審者さんに返してもらおうとすると


「…不審者さん!?…一応俺には奈倉って名前があるんだけど……本名で呼ばないとコレ…ネットにアップするよ?」


と、今度は逆に脅された

ネットにアップされるのは勘弁なので


「奈倉さん!!返してください!!」


と、慌てて言った、すると奈倉さんはまた笑い出し


「俺の名前は奈倉じゃないからアップしちゃお!!ナマエさんの家に沢山変な人が押しかけるかもね〜」


と、言い出した、私は思わず胸倉を掴み


「いい?それ以上変な事するとこの海苔の佃煮を全身の穴に注ぎ込むよ!!」


と、言った、家に変な人が押しかけるなんて最悪な事だから必死にそう言った

すると、奈倉……もとい不審者さんはまたニヤリと笑って


「まさかぁ、出来ると思ってるの?」


と、挑発してきた

その瞬間、溜め込めていたイライラが弾け


「食らえ!!婆ちゃんの海苔の佃煮攻撃!!」


と、叫び不審者さんの顔面にぶちまけた

いきなりの事で動けなかったのか、不審者さんは顔を海苔の佃煮で真っ黒にして、つまらなそうにしていた


「……美味しいね……これ」

「本名は?」

「……折原臨也……」


美味しいと呟いた瞬間、もう一つ瓶を取り出し、本名を聞いた

すると、降参と言わんばかりに両手を挙げ、名前を言ってくれた


「折原臨也……ほら、返して」


確かめるように呟き、折原さんから免許証を取り返す

そして、海苔の佃煮まみれの折原を鼻で笑い、部屋を出た


「……仕返ししてやる、ナマエ」


そう折原さんが呟いた事も知らずに

それから、数日後、私は黒ずくめの明らかに怪しい連中に連れ去られ、折原さんの所で働けと、命令された

命令されたのだ、決して、私の本意で働いたわけじゃない

こうして、海苔の佃煮のせいで、私は非日常に飛び込んだ

海苔の佃煮……そんな物が運命を変えるなんて……

私の心の叫びは誰にも届かず、溜め息をついて、笑いながらパソコンに向かう折原さんを呆れながら見た
 

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