Short(log)

□監視
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「ふぅ……すっかり遅くなっちゃった、急がないと……」


ストーカーの事を真選組に相談してから随分と経った

あの日からポツポツと電話がかかってくる事は無く、私自身も忘れてきた

そんなある日、仕事を終えた帰り道、日はとっくに落ちてネオンが目立つ表通りを早足で通っていた

人混みを掻き分け、家に戻ろうとして走っていると、携帯が急に鳴り出した

ディスプレイも見てる暇もなく、通話ボタンを押して耳に当てると


「よぉ、あれから大丈夫か?」

「土方さん!!」


土方さんの声がした

あの日から何かあったら連絡できるようにと携帯番号を交換していたのだ

でも、電話するなんて……何かあったらの話だ、ストーカーが捕まったのか?

そう疑問に思いながらも土方さんの言葉を聞いた


「実はな……ストーカー野郎の目星が付いたんだ」

「!!本当ですか!?」

「あぁ……」


土方さんの言葉に思わず叫んでしまう

今まで散々恐怖を送ってきたストーカーも捕まる!!

喜んでいると、携帯がまた鳴り出した

通話はまだしている……誰が今かけているのだ


「あの、土方さん……電話入っちゃったんで……」

「ちょっと待て!!今お前何処にいる?」

「え?……ターミナルの近くですけど?」


通話を切ろうとしたとき、土方さんが慌てた様子でそう言ってきた

慌てように驚きながらもそう答えると


「やべぇ……いいか!!通話を切るなよ!?」

「え……それどういう意味……」


土方さんの言葉に唖然としていると


「いいか!!よく聞け、ストーカー野郎は……!!」

「土方さん!?」


土方さんがストーカーの名前を言おうとした瞬間、通話が途切れた

電波が悪くなったのか……?私の方はターミナルの近くだからありえない、だとすると土方さんの方に何かが?

動揺したが、一度冷静になり考えた

とにかく、真選組以外の人物からの電話はでないようにしよう……

そう思い、家に向かいながらも携帯を見ていると、今度は沖田さんから電話がかかってきた


「!!もしもし!?沖田さん!?」


慌てて電話に出ると


「よぉ、ナマエ……」


沖田さんの声がゆっくりと耳に入ってきた


「沖田さん……あの、さっき土方さんが…ストーカーの目星が付いたって……でも、ストーカーの名前を言う前に通話が切れて……沖田さん、なにか知って……」

「そうですかぃ、名前はまだ聞いてねぇのか……」

「沖田さん……?」


沖田さんは私の言葉を遮ると、ゆっくりとそう言ってきた、声色から何かを喜ぶように

不気味さが伝わってきて思わず名前を呼ぶ


「……今、ターミナルの近くだそうですねぇ…ストーカーが近付いてるみたいなんで、迎えに行きます」

「あの……沖田さん、その前にストーカーの名前を教えてくれませんか?……沖田さんの言ったように知り合いに同じ人はいないか調べてみますから……」

「今どこですかぃ?」


沖田さんは私を迎えに来ると行ったが、何故か恐怖を感じ、話を変えようとすると私の言った事を聞かずにまた聞いてきた

その声に戸惑ったが、もう一度言おうとした時、さっきのように通話が入ってきた


「沖田さん……通話が入ってきたので……ちょっと待ってくれますか?」


沖田さんに聞くようにそう言うと、しばらく沖田さんは黙った


「あの……沖田さ……」

「ハハハハハハッ!!……なぁ、ナマエ……今どこですかぃ?……ターミナルの近く、少し前にコンビニもありやすねェ……それに、後ろには電気屋か……今から迎えに行きやす、動かないで下さいねぇ?」

「え……沖田さん?」


黙ったと思ったら今度は笑いだし、私の位置を的確に言ってきた、確かに前にコンビニ、後ろに電気屋がある


「沖田さん……あの……もしかして……」


そんな沖田さんの行動に恐怖と確信を感じた

もしかすると……沖田さんは……


「沖田さんは……私の……」


沖田さんが……私の……


「ストーカー……?」


ストーカーじゃないのか?

しばらくまた沈黙が私達を包んだ

ただ聞こえるのは逆の耳から聞こえる人混みの足音か会話だけだ

それと同時に心臓がやたら大きく高鳴る


「……そうですぜぇ?」


その言葉は、携帯からと後ろからしっかりと聞こえた

私が振り返る前に声の主は私の腕を掴んだ


「ナマエ……酷いじゃねぇですかぃ、俺は…ナマエの監視をしてただけですぜぇ?現に土方のヤローがお前にくっついている……」


そう言ってきた声の主、沖田さんは私を抱きしめた


「やめッ……離して!!」


捕まったら終わりだ、それぐらいは分かる……!!

そう思い引き離そうとすると、沖田さんは私の首に手を添えた


「ナマエ……ようやく捕まえましたよ……」


そう言った沖田さんの目はネオンがあるのに全く光を帯びてなかった、ただ、獲物を仕留めた獣のような顔で私を見ていただけだった

いつから監視されるようになったのだろうか、いつから沖田さんは私の事を知っていたのだろうか……

そんなことを思いながら私は手に持っていた通話が入っている携帯を地面に落とした


カシャン……


と、言う、音が人混みの足音や会話に混じりながら響いた
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