Short(log)

□幼馴染み
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(銀時視点)


後、三分……

そう考えながらセンコーの長くてどうでもいい話を聞き流す

後、一分……!!


「えー、では、今日の連絡はこれで終わりだ、じゃあ解散」

「しゃァァァァァァァァァ!!」


センコーの言葉を聞いて、俺は席を勢い良く立ち上がり、鞄を持って廊下に飛び出した

速く!!速くしねぇと……ナマエがまた先に帰るかも……!!

階段を駆け上り、そんな不安を持ちながら教室に向かう


「ナマエ!!」

「うわ!?……銀時か……いつもそんなに急いで……ビックリしたよ」

「うっせ……誰のせいだと思ってんだよ……」


教室にたどり着き、ナマエの名前を叫びながら入ると、夕焼けの光が入り込んでいる教室にナマエだけが立っていた

なんで俺がこんなにナマエの元に慌てていくのかと言うと……

俺達は家が近いせいか、幼稚園の頃から一緒に帰っていた

だけど、小学校のある日…俺のクラスがちょっとした問題を起こして居残りさせられた日、いつものようにナマエを校門の前で待っていた

もちろん、ナマエはとっくに帰っていたがそんな事はあの時の俺には分からなかった

結局、半べそかきながら一人で帰り、家に着いたらナマエが何故か俺ん家の晩御飯を食べていた、しかも俺の

そんな事件から俺はいつもこうしてナマエの元まで走って行くのだ

あの日の孤独な時間は、ある意味トラウマだ……


「それにしても、ナマエ、お前いちいち教科書持ち帰ってるのか?」

「んー?今日はたまたま」

「へぇ……」


適当な机に腰掛け、ナマエとくだらない話しをする

ナマエは昔からずっと一緒だった、幼馴染みとも言うだろう

元々、家が近く、歳が同じだったから仲良くなったのだ

だが中学ぐらいになるとそうはいかない……時々喧嘩もした、だが次の日には嫌でも顔を合わせるので大体仲直りする

そんな関係を続けて気が付けば高校……同じ高校を受験して見事に二人無事に受かった

実は俺がわざとナマエと同じ高校を受けたのは内緒だ


「待たせてごめん、行こっか」

「ん?あぁ、別に、行こうぜ」


少し申し訳なさそうに謝ってきたナマエに返事をして、鞄を肩にかける

そして、沈もうと動き出す太陽に背を向けて並んで歩き出した

今となってはナマエとの歩幅は完璧、ズレる事が無いぐらい揃っている


「今日なんかいい事あった?」

「あー?別に……いつものように寝てたわ」

「銀時……そんなんだからテスト赤点なんだよ……」

「うるせぇ……そん時ゃまたお前に教えてもらう」

「坂田君、授業を受けなさい」

「無理でーすナマエ先生ぇ」


勉強の事で怒ってきたナマエとセンコーと生徒のモノマネをしながら歩く

こんな事をしていると、大体の奴らは俺達が付き合ってると勘違いするだろう、それは昔からあったが今でも慣れない

俺としては付き合いたいのだが、今のナマエとの関係を失いたくないから言い出せない、我ながら女々しいとは思うが、ずっと一緒だったからこそ、そう思うものだ

ジャンプやアニメの世界では、幼馴染みは大体くっつくが、現実では言い出せないのが多いと俺は思う、もしくは幼馴染みは幼馴染みと、恋人になるところまで行かない物もあるかもしれない


「なんか買ってくか?」

「いや、いいよ、太るから」

「もう太ってるだろ?痩せろ」

「なにを!!銀時こそ、その天パ早くストパーにしろ!!」

「お前に天然パーマの苦しみがわかるか!!」


こうやって憎まれ口をたたいてしまうからこそ、そう思ってしまう

ナマエにとっては俺はただの幼馴染みとしか思ってないのかもしれない

そう嫌な考えが頭を駆け巡るのだ


「あ、そうそう、銀時さ私のクラスの沖田総悟君知ってる?」

「あ?」


急にナマエが俺のある意味友達の沖田の話題を出してきた


「知ってるって…俺は一応知ってるけど…お前のクラスだから一番知ってるのはお前じゃねぇの?」


ナマエの顔を覗き込みながらそう言うと、ナマエは少しだがほんのりと顔を赤らめた

まるで、照れてる時のように……

そんなナマエの表情に驚いていると、一番聞きたくない言葉がナマエの口から出てきた


「それがさ……恥ずかしくて話せないんだ……だからさ、使うようで悪いけどさ……帰り道誘ってくれない……?」


そう言うナマエの顔は今までに見たことないぐらい真っ赤でかわいらしかった、その顔を向けている人間が俺では無かったが

ナマエの言葉に一瞬目を見開いたが、すぐに戻し


「は……はは……お前でもそんな事言うんだな、なに?好きなの?」


と、笑いながら言った

好きなの?と聞いておいて言える事じゃないが答えて欲しくない、またいつものように俺をからかってるだけにして欲しい

また、いつものように最後には他愛もない冗談を言い合って……ナマエの嬉しそうな笑顔を見て…俺は家に戻るんだよ……それが日常なんだ……

心の中でそう強く願っているとナマエはゆっくりと頷き


「好き……なの……」


と、小さかったがそう言った

これが俺に向けられた言葉だったら良かったのに……これが……俺だけの言葉だったら良かったのに……

そう思いながら、ナマエの事を馬鹿にしてから、さっきの話を遠ざける様に別の話をした

そして、またいつもの他愛もない話をして俺達は別れた

家に着いてから俺はゆっくりと鞄を下ろして、溢れ出す涙を止めようともしないで泣き叫んだ

情けない姿だったかもしれないが、こうでもしないと俺の精神が壊れそうで、狂ってしまいそうで

俺がもし、勇気を出してナマエに告白をしていたら、なにか変わっていたか……?

そんな事を考えながら、俺はポケットから携帯を取り出して、電話帳にある"沖田総悟"と言う名前を選び、連絡をした


「……ハハッ……なにやってんだよ……俺……」


涙を流し切った後、ゆっくりと俺はそう呟いた

それから、俺はナマエと沖田が上手くなったのを見て、ナマエと疎遠になった

幼馴染みの特権は大体二つ……付き合う事と、ソイツの恋を手伝う事……俺は、後者だっただけだ……そう考え、俺は爆発寸前の気持ちを抑えた
 

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