Short(log)
□環状線
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「これは、俺の血統の問題だ」
そう言って柱の男、カーズがいるホテルに向かって行くシーザー
ああ、止めないと……この後シーザーは死んでしまう、止めないと
そう思い、私は慌てて足を動かした
「シーザー!!行っちゃダメ!!」
「……悪いなナマエ、さっきも言った通りこれは俺の血統の問題、止められても俺は行く」
シーザーを止めようとそう言うとシーザーは私の手を優しく包み込み、自分の肩から離した
そして、シーザーはゆっくりとホテルに向かって歩いて行った
私はまた泣く事しかできなかった、泣き崩れる私をリサリサ先生とジョジョは慰める様に背中を撫でてくれた
そして、少ししてシーザーはまた、ホテルの天井の下敷きにになった
ああ、また助けられなかった、一体何巡したら私はシーザーを助けられるのか……
どんなに止めてもシーザーは止まってくれない、まるでジョジョの為にワムウのピアスを取って死ぬ事が使命だと言っているように
そして、私はまたシーザーの側で涙を流す、何度も何度もシーザーの名前を呼ぶジョジョ、流れる涙を止めようとしないリサリサ先生、そんな二人の側で私は涙を流す
「ごめん……シーザー……ごめん…結末が分かっているのに……助けられなくて……」
そう言って私は涙を流す、涙でボヤけた視界がどんどん暗くなっていく
もうやめて……もうシーザーが死ぬところを見たくない……ッ!!
そんな私の願いも叶わず、完全に意識が無くなった
気が付くとまたシーザーとジョジョが喧嘩をしていた、このやり取りすら、もう何回目だろうか
そして、シーザーはまたベランダから飛び降り、ホテルへ向かった
「ッ……シーザー!!」
名前を呼んでもシーザーは止まらない、一歩一歩死に近付いて行く
「ナマエ」
いつも優しく私の名前を呼んでくれたシーザー
「頑張ったな」
そう言って頭を撫でてくれたシーザー
私の世界にはいつもシーザーがいた、リサリサ先生も、ジョジョもいつも一緒にいてくれた
思い出すとまた涙が出てくる私がシーザーを救ける事を諦めたらこの地獄のような繰り返しが終わるだろうか
環状線のようにくるくる回る苦しみから解放されるだろうか……
「シーザー……ッ」
「……ナマエ……シーザーなら大丈夫だ、だから落ち着け、なっ?」
雪が積もった道を歩いていくシーザーに何度も名前を呼ぶ私にジョジョは落ち着かせようとする様に私の肩を抱いた
「ジョジョ……私……もう嫌……」
「な……何が嫌なんだよ……」
私の言葉にジョジョは驚いた様に聞き返してきた、そんなジョジョの真っ直ぐな緑色の目を見て私は
「もう……シーザーが死ぬところを見たくないッ!!」
と、叫んだ、その瞬間、ジョジョとリサリサ先生は驚いた顔をした
「そ……それ、どういう事だよ……ナマエ」
「……シーザーが……死ぬ……?」
驚いた様に私に言ってきた二人を見ながら私は
「もう……こんなに苦しいなら……シーザーを救ける事ができないなら、繰り返したくないッ!!」
と、叫んだ、そして、しばらくの沈黙の後、リサリサ先生がとりあえずシーザーを止めに行こうと提案して私達はホテルへ向かった
今まで言ってなかったことを言ったのだ、少しは変わるかもしれない
そんな淡い期待も無残に打ち砕かれた、シーザーはまた最後の力を振り絞ってジョジョにバンダナとピアスを残した
「シーザー……」
シーザーが眠っている隣で私はまた泣き崩れた
しかし、ボヤけた視界は暗くはならずそのままだ
「なんで……なんでェ……なんでまたループしないの……なんでまた繰り返さないの……」
そんな私の声は神様には届かず、リサリサ先生とジョジョの泣き声に混ざって消えた
シーザー……ごめんね、私が諦めなかったらシーザーは救えたかもしれない……ごめんね……
「ごめんね……シーザー……」
泣きながらシーザーに謝ってもシーザーは何も言ってくれなかった
あの暖かい手で頭を撫でてくれる事ももう無い
シーザーは私の世界で何巡目の死を迎えてようやく死ねたのだ
所詮、私の足掻きは無駄だったのだ、それを伝えるように太陽はシーザーを迎えるように照らした
何回も見た世界でそれが唯一違う事だった