Short(log)
□伝わる温かさ
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(ジョセフ視点)
俺は今無性に苛立っていた、別にエリナおばあちゃんに買って貰った服が汚れたとかそう言う苛立ちじゃあない
"柱の男"と戦う為、波紋を修行する事になったのだが、その味方というか仲間というか……とにかく一緒に行動する奴がすぐに女を口説くスケコマシなのだ
それは別に見なければ問題ないが……今口説いてる女が重要なのだ
「シニョリーナ、君の為に君と同じくらい輝くネックレスを買ってきたよ」
「シーザー、私の名前はナマエだって、何回言ったら分かるの」
「……ナマエ、君の為に君と同じくらい輝くネックレスを……」
「二度も同じ台詞を言わないの」
「……手厳しいなナマエは……でもそこがまた可愛らしいよ」
そんな会話をする二人を俺は隣で聞いていた
俺と一緒に行動するシーザーが口説いているのは俺の幼馴染みのナマエ
なんでも、俺が心配でスピードワゴンのじいさんに頼み、ここまでついて来たらしい……
可愛げのある奴だが、小さい頃から一緒の為か、せりげなくアタックしても軽く流されるのが多い……
昔の悲しき記憶を思い出してしまい、少し視界が霞むが、なんとかこらえた
そしてチラリとナマエを見ると俺は思考が一瞬停止した
あのナマエが耳を真っ赤にしている!!しかも、シーザーの奴はそれを見て楽しそうに笑っているのだ
明らかに口説かれて赤面したとしか考えられない!!……が、ここで何か言ったとしても、俺の勘違いだったらナマエの前で恥をかいてしまう
いつも頼れる俺をなるべく見せてきたナマエにそんな恥ずかしいところを見られる訳にはいかない
俺は内心心臓バクバクで、顔には出さず二人の会話を聞いた
「フフッ……顔が真っ赤だよシニョリーナ」
「だ……だからァ!!私の名前は……」
「ナマエ、だろ?……そんなに俺に名前を呼んで貰いたいのかい?」
「なッ!!ーーーッ!!ば……馬鹿!!」
「それは肯定と見ていい?ナマエは恥ずかしくなると悪口を言う癖があるからね」
「そ…そんな癖無いし!!馬鹿!!スケコマシ!!スケコマシーザー!!」
「そんな俺の言葉で顔を真っ赤にしているナマエ、凄く可愛いよ」
「ーーーーッ!!話を聞けぇ!!」
……なんか……俺、今隣でカップルがイチャついてるぐらいの気まずさがあるんだけど……ナマエが今赤面してるの!?俺でもなかなか見れない表情なんだけど!!
俺はなんだか気持ちがイライラから落ち込みに変わり、少しだけ二人から離れた
だが、その瞬間、ナマエが立ち上がり、俺の後ろに隠れるようにしがみついた
「お……おい!!ナマエ?」
「ジョセフ……スケコマシが……スケコマシがァ……」
いきなりの事で驚いていると、ほんのり顔を赤くしたナマエがシーザーの方を指さしていた
「ジョジョ、そこを退くんだ、それじゃあナマエに愛を囁けない」
すると、その瞬間シーザーが立ち上がり俺の後ろにいるナマエを見ようとしていた
「ジョジョ、そこを退くんだ!!」
「ジョセフ!!信じてるからね!!私をスケコマシなんかに渡さないでよ!?」
「ジョジョ!!」
「ジョセフ!!」
二人はついに俺を巻き込んできた、俺はいきなりの事でかなりパニックになり
「……いいか、ナマエ……こういう時は逃げるんだよォーー!!」
と、言い、何故かナマエを抱きかかえて俺は逃げ出した
後ろの方でシーザーの声が聞こえるが、正直どうでも良かった、心の奥底でナマエを抱きしめられて嬉しいと思う感情があった
少しの間、俺は走り、シーザーを撒いてから、ナマエを降ろした
「あ……ありがとう」
「……別に……お…幼馴染みが困っているんじゃあ仕方ないしな……」
ナマエのお礼の言葉になんとなく嬉しさを感じ、自分でも良く分からない言い訳をしてしまった
するとナマエは二、三回瞬きを繰り返し、クスリと笑い
「ありがとう、ジョセフ」
と、言い、一生懸命背伸びをして俺の頭を撫でた
思っても見なかった行動に驚いてしまい、俺はナマエから素早く離れた、するとナマエは少し悲しい顔をして笑った
ああ……俺が見たいのは今みたいな顔なんかじゃあない……さっきみたいに……笑って欲しい……
そう言いたかったが、俺はシーザーみたいなキザな台詞を言えないし、ナマエみたいにサラッと言えない
だから俺は俺ができる行動をとった
「ジョ……ジョセフ……!?」
ナマエの声がやたら近くで感じられた、ナマエの少し熱い体温も、バクバクと動く心音も感じられた
そして実感した、俺は今ナマエを抱きしめているのだと
驚きのせいか、俺から離れようとするナマエに俺は顔が見られないようにしながら
「俺はシーザーよりずっと前から近くにいるんだから……もっと甘えてくれよな」
と、自分でも驚く台詞を言った、その瞬間ナマエの体温と心音は一気に上がり
「ジョ……ジョ…セ……ジョ…セフ……」
と、かなり吃りながら俺の名前を呼んだ、近くで言ってもらえてなんだか嬉しくなって
「……ナマエ……好きなんだ……ナマエ……」
と、ナマエの名前を呼びながら好きと言ってしまったが、こうなったら行ける所まで行ってやる
好きと言うとナマエは
「な……何…何…い……言って…言ってるの!!」
と、面白いくらいに照れ出した
これはシーザーの事を言ってられないな……
そう心の中で苦笑して、俺はナマエに返事を催促した
ドキドキと俺もナマエと同じくらい心拍数が上がった
自分の心臓の音で周りの音が一切聞こえなくなってしまった時、小さい声でナマエは
「す……好…き……」
と、言い、俺の背中に腕を回してくれた、その瞬間顔がニヤけのを感じたが何とか持ちこたえる
それからしばらく俺達は抱き合っていたがシーザーの声が遠くから聞こえて慌てて離れた
顔がかなり熱くてシーザーが来るまで俺達はベンチに座っていたが、お互いそっぽを向き、顔を片手で押さえていた
もう一方の手はお互い触れていたが、まだ重ねる事は出来なかった