Short(log)

□命短し恋せよ乙女
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前田さんと散歩をしてからもう一ヶ月も経った

あれから、私はなるべく前田さんとは会わないようにしている、会ったとしても合わす顔がない……

そう思い、この一ヶ月母上の手伝いに専念した


「ハァ……」


でも、正直前の方が楽しい……

好きな時に好きな人の顔を見て、手伝いをする……そんな生活をもう一度したい、でもそれを壊したのは私自身だ……

忘れるしか、手はない……

そう言い聞かせ、手を動かした

その時、絶望的な言葉が聞こえた


「敵の軍勢だ!!逃げろ!!」

「誰の軍だ!?」

「分からない…だが俺達を狙っているのは確かだ!!とにかく逃げろ!!」

「利家様に伝えろ!!早く逃げろ!!」


敵の軍勢が攻め込んで来ている

そんな言葉を聞いて、街は大騒ぎになった

皆が逃げ惑い、私は母上と逃げていたがはぐれてしまい、それどころかどんどん隠れる所から離れてしまった


「痛……ッ」


そして、もっと最悪な事が起きた、気が付いたら周りは誰もいない

気絶をしてしまったらしい……


「どうしよう……」


どうにもできなくて戸惑っていると、後ろから兵士が歩く音がした


「!!逃げなきゃ!!」


慌てて木の陰に隠れようとしたが


「そこに何かがいるぞ!!」

「敵か!?」

「なんでもいい!!矢を放て!!」


そう言う声が聞こえ、私は胸が熱くなる感覚がして、地面に倒れた

どんどん血の抜ける感覚がして、遂には意識が朦朧とした

私は……射られたのか……

頭だけは酷く冷静で、その考えが消えた瞬間、私は意識が途絶えた

最期に見たいと思った顔は、いつもの笑顔の前田さんだった




(慶次視点)


「……ナマエちゃん……」


敵の軍勢を倒し、木の陰の近くに人が倒れているのを見つけ近寄ると、ここに居て欲しくない人物が居た

何故そこに、いつから?そんな考えも吹き飛んだ

俺はただ、その冷たくなった身体を包み込んだ

二度と熱は帯びない、それは理解している、でも受け止めたくない

受け止めた瞬間、あの日のことを忘れたくなりそうで、あの日のことを無かった事にしそうで……

命短し恋せよ乙女……ナマエちゃんの為の言葉だ

俺があの時答えていれば命が短くてもこの子の恋は成就した……

俺は永遠に目を開けないナマエちゃんを抱きしめて、静かに泣いた
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