Short(log)

□命短し恋せよ乙女
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それから私達は散歩の筈が、花見をしたり一緒にご飯を食べたりした

趣旨が変わっていることに気が付いたのは日が暮れてからだ


「すっかり暗くなっちゃったな…なんか、ごめんよナマエちゃん」

「あっ!!いえいえ別に……私もこんなに気を休めた時が無かったんです……だから、大丈夫ですよ」


謝ってきた前田さんに首を振りながらそう答えた

前田さんはそっか、と一言呟きボーッと夜空を眺めた

桜でも似合っていたのに夜空も似合っている前田さんに嫉妬してしまう

それと同時に顔にまた熱が集まるのを感じた

もし、今頭の中で思っている事を言ったらどうなるのだろう……この関係が崩れてしまうのでは?でも……

そんな考えが頭の中を支配した


「どうしたんだい?ナマエちゃん、そんなにボーッとして……」


前田さんの声が聞こえ、私の口は勝手に動いた

頭の中を支配している事を聞いてしまったのだ


「前田さんは……私の事どう思っていますか?」

「えッ……」


私の言葉に前田さんは戸惑いを隠せていない様だった


「あッ……すいません……私、帰りますね!!」

「あぁ!!ちょっ……」


前田さんの戸惑った顔を見てられずそう言い残し私は走って家に帰った

前田さん……困っていたな……そりゃそうだよね、こんな普通の女、好きになってくれる筈ないよね……

自分にそう言い聞かせ、私はあの時の前田さんの様に夜空をボーッと眺めた




(慶次視点)


「行っちゃった……」


俺は伸ばした手をようやく降ろした

あの時のナマエちゃんの顔は真剣そのものだった……

正直な所、俺はあの子に気があって嘘を付いてまで散歩に誘った

呉服店のナマエちゃん……

地元では有名な看板娘だ、それ故に敵も多い……

あの子が有名な事にも興味があったが、今回は違った


「命短し、人よ恋せよ……」


いつも言う言葉…それがあの子を見た時頭をよぎった

いつも応援する側だが、あの子に関しては俺は応援される側だろうな

一目惚れだ……柄にも無く

だから、あの時の言葉は嬉しかった、でも……


「俺は……やっぱり……」


俺は秀吉とねねの事もある……俺が幸せになるなんて二人はどう思うだろうか……二人の事がすぐに思い浮かぶ


「ハァ……こんなんじゃ、人の恋を応援出来ないよな……」


また夜空を眺めてそう呟く


「なぁ、秀吉、ねね……俺は幸せになってもいいのか?お前達は怒らないか?……って、何やってるんだよ、俺」


夜空に向かって話し掛けたが馬鹿馬鹿しくなり夜空を見るのをやめた

あの子の事を忘れるしか、諦めるしか無いのかな……

俺はまつ姉ちゃんに見つかるまで夜風に当たり、必死に考えていた


答えは……諦める事にした


ナマエちゃんには悪いが、俺は幸せになる資格なんて無い気がするからだ、人の恋を応援する事だけに専念する事にした……
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