Short(log)

□帰る場所
2ページ/2ページ



人の叫び声、悲鳴、鼻につく血の臭い……これら全てが揃う場所……戦場……

佐助と喧嘩をして、しばらく経った


「ナマエ殿、某は向こうの大将を倒してくるでござる!!」

「あー、行ってらっしゃい…」

「ナマエ、気合いが足りぬぞ!!」

「あぁ…すいません、お館様」


熱血バカ二人に関わっていたらこっちまで火傷する……

そう思い、二人から離れた

一人で敵の戦力を地味に潰していると


「や、ナマエちゃん」

「げっ……」

「げっ…って何よー、せっかく俺様が来てあげたのに」

「頼んでないわ猿」

「猿!?酷くない!?」

「うるさい」


一番会いたくないやつに会ってしまった

適当に罵り、少し離れながら敵を斬っていく

私はその時イライラしていたのか、油断していたのか…背後にいる敵に気がつかなかった


「うあああああ!!」

「なっ!?」

「!!ナマエ!!」


敵の声に気が付き、後ろを振り返ると刀を振りかぶっている敵が見えた、防ごうとしたが間に合いそうにない

その時佐助が私の名前を呼び捨てにしたが、気にしている余裕もなかった


「……え……」

「……がッ……」


私の下に血が垂れる、そして敵は力尽きたのか倒れた、そして私の前にいるやつも倒れた

私はただ、呆然と立ちすくむだけだった


「な……んで……」


倒れているのは


「なんで……私なんかを……」


ついさっきまで喧嘩をしていた佐助だった


「さ……佐助……?」

「ナマエちゃん……ゼェ……無事?……ゼェ……」

「何……言って……」


名前を呼ぶと佐助は弱々しく私の名前を呼んだ、そして私にもたれる様に倒れてきた

地面につく前に支える、そして辛くないように膝に乗せる様に横にした

佐助は荒く息をして、虚ろな目で私を見ていた


「無事…なら……いいや……」

「何してんだよ……誰が助けろなんて言った!!……馬鹿なことするな…猿……」

「最期まで、その呼び方?……ハハハ……困ったよ……」

「佐助が居なくなったら……誰が幸村に団子を作る?……誰が二人の殴り愛を止める?……誰が…私の部屋にイタズラをする……」

「ごめんねぇ……俺様、苦労しっぱなしで……疲れたんだよ……ナマエちゃん、代わりにやって?」

「サボるな……馬鹿……なんで私が自分の部屋にイタズラするんだ…」

「ハハハ……そりゃそうだね……」


そんないつものやり取りをしていても、佐助はどんどん冷たくなっていく

それを止めるように必死に手に力を込める


「ナマエ…ちゃん…俺様が、なんでナマエちゃんの部屋に…イタズラ……してたと思う?」

「…知らないわ……知らないから…また聞かせろ……」

「ハハハ……無理だよ……理由はね……ナマエちゃんは……戦から帰るといつも……疲れた顔して……寂しい顔してるんだよ……」

「佐助……」

「……だからね……柄にもなく慰めようかと……」

「……余計なお世話だ……猿」


今更知った、佐助の優しさだった

佐助は私を慰めるためにあんな事をしていたんだ…それなのに私は……そんな佐助に斬りかかった…最低な奴だ


「……余計な…お世話って……酷いよ……たださ…俺様の……帰る場所くらい…皆、笑顔で…いて……欲しいんだよ」

「帰る……場所……」

「……そう……今回は無理そう…だけどね……」

「!!佐助!!」


呟くと佐助の手から力が抜けていく、それを必死に掴む


「ナマエちゃん…こっち見て」

「は……?」


急に変なことを言ってきたが、言う通りにすると

唇に柔らかい感触が来た

唖然としていると、佐助はニコリと笑い眠るように力を抜いた


「……佐助……」


私はゆっくりと佐助の体を抱きしめる


「それは……ずる過ぎる……この……馬鹿猿」


それが佐助に最期に言った暴言だった

それから私の帰る場所は少しの間、悲しみに包まれたが、少しずつ着実に元に戻ってきた

あの馬鹿猿が産まれ変わってでもして戻ってくるのを私はしっかりと、アイツが帰る場所で待っている

たとえ、それが不可能だとしても
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ