Short(log)

□銀時誕記念
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「……ハァ……馬鹿みたい」


街から少し離れた河原で、私はプレゼントを抱くように体操座りをした

夕焼けと、冷たい風が気持ちを落ち着かせてくれる


「……私なんかが、プレゼントなんて渡せるはずがないんだ……柄にもないことするから……こんな事になるんだ……」


ひたすら自分を責めた

だって、プレゼントを渡せなかったのは紛れもない、私が悪いんだから

チラッと手の中を見ると、渡せなかったプレゼントがある


「……ッ……」


なんだか、それがあることにイライラして、今まで大切に持っていたのに馬鹿みたいに思えてきて

それを投げるように、腕をあげた


「それを捨てるのかい?お嬢さん」


後ろから声がした、今まで聞きたかった声が

私が何かを言う前に、その人は言葉を続けた


「捨てるのなら…俺が貰ってやってもいいぜ?今まで誰かを探して、走ってきた…ナマエお嬢さん?」

「ぎ……銀さん……」


上げた腕を下ろして、後ろを見ると、夕焼けが銀髪に反射して綺麗な色になっている銀さんだった

今日、この顔が見たかった…この声が聞きたかった…

今日の事を振り返り、何故か涙が頬を濡らした


「おいおい、今回の準主役が泣くなんて…大丈夫かよ」

「……だって……私……銀さんに追い付けなかった……」


涙を見せるのは少し嫌だった、なのに、何故か涙が出てくる

それを必死に拭っていると


「まぁ、追い付けないだろうよ…でもいいんじゃねぇの?結果的にナマエは俺と会えたんだから」


と、銀さんはそう言って私の頭を撫でてきた

頭を撫でてくれた事に、嬉しさより恥ずかしさがこみ上げてきた

銀さんに泣いてる顔を見せるなんて、嫌だ……せめて、好きな人の前では強い女を演じたい……

そう思うと、涙は徐々に止まった


「大丈夫か?」

「……うん……大丈夫だから頭の手、退けてよ」

「ん?おぉ、悪ぃ」


言ってから、後悔した……なんか、感じ悪い女になってしまった……

そう思い、俯いていると


「んで、俺に渡したいのって…なに?」


と、銀さんが言った

多分、今、銀さんは少しだけ笑っているのだろう…ふざけるなこのマダオが

そう思ってもやっぱり恥ずかしいもので、なかなか言えない


「……あ……誕生日でしょ……今日……銀さんの……」


なんか、英語みたいな順番になってるゥゥゥ……!!

そんな言葉でも、銀さんはおお、そうだなと、いつも通りの返事をしてくれている


「……その……これ……」


下を向きながら、私は袋詰めされたプレゼントを渡した


「…ありがとよ、わざわざすまねぇな」


銀さんは少し笑いながら、しっかりと受け取ってくれた


「…クッキーか…」

「……うん……ごめんね、さっきチョコレートパフェ食べたばっかでしょ?」

「いんや、ちょうどチョコレートパフェじゃ糖分が足りないと思っていたんだよ」

「……やっぱ、野菜クッキーの方がよかった?」


なんだか、私だけ真面目な感じだったのに、いつの間にか私もいつも通りの口調になっていた

不思議に思っていると、銀さんはクッキーを一つ摘み、口にほおった

……うまくできてるかな……あれ、実は私の手作りなんだよ……

少し焦っていると


「…うまいじゃねぇかよ」


と、ボソッと銀さんが呟いた


「……ッ…当たり前だよ……バカ」


私は嬉しかったが、なんだか恥ずかしくなって、暴言を吐いた

暴言を吐いた後、目の前が銀さんの一張羅の色で染まった


「誕生日おめでとう」


銀さんの腕の中で私はそう呟いた
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