Short(log)

□思い出
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深夜、仲間達が寝静まった後、俺は、ある部屋に行く

俺の隣にある部屋

昔の……戦争の時の仲間の荷物を置いてある部屋

荷物と言っても、刀一本だが……

刀一本のためにこの部屋はある

ナマエ、女ながらも俺達と共に剣を持った女


「…ナマエ」


俺達を守るために、死んだナマエ

最期は、俺の手の中で死んだ


「……悪かったな……何回詫びいても足りんが……」


そう言いながら、刀に触れた

……いや、正確には触れようとしただ

背後に気配を感じた


「ッ!!何奴!!」


慌てながら振り返った

そして、俺は目を見開いた


「……な…………ナマエ……?」


死んだはずのナマエの姿がそこにあった

俺はすぐに走った

ナマエに向かって

ギュッと抱き着くと、ナマエは抱き返してくれた

温もりは、あの時しっかり無くなっていたのに、確かにそこにあった

まるで夢でも見てるのかと思った


「ッ……ナマエ……なぜここに……お前はッ……あの時……」


ゆっくりと口を開き、そう言うとナマエはしっかりとした口調で


「……ヅラがね……悲しんでるって銀時に聞いて、黄泉帰りしちゃったよ」

「ッ……ヅラじゃない、桂だ」


涙が流れそうになったが、止めようといつもの言葉を言った


「……銀時のやつがお前に言ったのか?」

「……うん、だから様子を見に来たの……」


俺から離れながら、ナマエはそう言った

そして、いつものようにやんわりと笑った


「その様子じゃ、本当に何年も後悔してたんだね」

「…………あぁ…………」


図星を突かれ、静かにそう言った

すると、ナマエはクスクスと笑い


「バカだね…私としてはしっかりと前を向いて欲しかったのに……」


と、少し悲しめに言った


「……バカじゃない、桂だ…前を向いて欲しかったのに……か……何度も前を向こうとした、だが…お前を忘れて、前なんて向けないさ……」

「……ヅラ……」


そう言って、ナマエの頬をゆっくりと撫でる

本当に夢のようだ、無くしたナマエがそこにいて、こうして撫でれる……


「……ありがとう、そんな事言われると、バツが悪いよ」

「……?ナマエ?」


ナマエは悲しめに笑いながら、ゆっくりと立ち上がり、刀に近付いた

そんなナマエの行動を不思議に思いながらも見ていると


「……ヅラが前を向けないなら、この刀……私が貰っていくよ」


と、言って、ナマエは刀を掴んだ

そして、俺はある事に気が付いた


透けている


ナマエの足が透けているのだ


「ナマエッ!!」

「……ヅラ…ううん、桂…ごめんね、ずっと背負わして……」

「やめろ…ナマエ…そんな事……言うな……」

「……じゃあ、私行くね」

「!!ナマエ!!」


透けていくナマエの体に抱き着いた

透けるのを止める様に、しっかりと

しかし、ナマエは俺の横で笑いながら


「…本当に、ありがとう…そう思ってくれるだけでも嬉しいよ」


と、言って消えていった

ゆっくりと、まるであの時の様に、俺の手の中で


「ッ……ナマエ……」


俺は、何も無い手の中を見て、膝をついた
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