Short(log)

□好きな人
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「まぁ、この辺で座ってて、飲み物持ってきやす」

「あ……うん」


すっかり江戸っ子になって……

あれ?今親みたいな事を……?

そんなことは置いておいて、私は座った

……本当に総悟君……

ずっと想いを寄せていた人が江戸にいても、私の名前を覚えているなんて

少し嬉しい気分になっていると


「お待たせしやした〜」

「あ!!お帰り」


総悟君はお菓子とお茶を持って来た

……なんか……前よりかっこよくなってない?


「…ナマエ…?どうしやした?」

「……あっ!!いやいや!!なんでもない!!」

「……?そうですかぃ」


総悟君に見惚れていたなんて言えるわけが無い!!

なんか……私……変態みたい

そう思いながらお茶をすすった


「……しかし……懐かしいですねぇ」

「……だね……」

「こっちに来る時、ナマエが見送りに来てくれなかったもんで、てっきり嫌われたのかと……」

「……ご……ごめん」


……言えないよ……別れるのが辛くて、夜泣いちゃって、その日目が腫れて見送りにも行けなかったなんて

少し恥ずかしくなり、またお茶をすすった


「……総悟君、どう?こっちの生活」

「ん?……まぁ、楽しいですねぇ」

「そ……そっか」

「ナマエは?どうよ?」

「相変わらずだよ、普通」


そんな他愛もない話をしてたらあっと言う間に夕方になった

そろそろ帰らないと……

今日は泊まる所も予約してないし、そもそも総悟君の働いてるところを見に来ただけだから……日帰りなんだよ


「じゃあ……私そろそろ帰るね」

「あ、門まで送りまさぁ」


さりげに紳士な一面を見た気がする




「じゃあ、親にもよろしくな…あー…ナマエの家の団子食べたくなってきた」

「ハハハッ……今度持ってくるよ」

「……頼みますぜぇ」


……言いたい……

総悟君の好きな人は誰かって

私は総悟君が好きだって


「あ……その……」

「ん?」


……言いたい……

でも、思いとは裏腹に私は俯いてしまった

それを見てか、総悟君は顔を覗いてくる


「……ナマエ?」

「あ……その……総悟君……の……」


少し震えながら、勇気を出して言った


「実は……総悟君……の…事が……好き……なんだよね……その……総悟君は……好きな人は……居ないの?」


言えた……

でも、小声すぎて言えたかも分からない

すると、総悟君は


「……なんて言ってんのか聞こえませんぜぇ」


と、言った

……そうか……まぁ、いいや……あれはダメだわ……恥ずかしい

そう思い


「あ!!いやいやいや!!なんでもない!!うんうん!!」


と、手を横にめっちゃ振った


「じゃ……じゃあね」


多分、今私は顔が赤いだろう、恥ずかしさで


「あぁ、気を付けて下せぇよ?」

「う……うん!!」


聞こえてなかったけどいいや、私の中では言えてたから……

少し納得はできなかったが、そう思い自分の中で完結させた


「ナマエ」

「んー?」


急に総悟君が名前を呼んだので振り返った

すると


「俺が好きなのは、アンタでさぁ!!ナマエ!!」


と叫んできた


「は……は……ハァァァァァァァ!?」


パニックになっていると、総悟君は走ってこっちに来た

そして


ギュッ


と抱き締めてきた


「え?……ん?……ん?……え?」


状況を理解できない私の頭の上で、総悟君はいつもの声で


「俺が好きなのは、ナマエなんでさぁ……だから、今度来る時は…もう少し早めに来て下せぇよ?」


と、言って

頬に顔を近づけた

そして、何かを押し当てるような感触がした

……え?ナニコレ?ん?

状況を理解したのはそれから二秒ぐらいした後だ


「な……何してんのォォォォ!?」

「早めに来て下せぇよ?約束でさぁ」


そう言い、総悟君な半ば強引に小指と小指を引っ掛け、ゆびきりげんまんをした



家に帰ってから思い出し、お風呂でのぼせたのは、総悟君には言わないでおこう
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