Short(log)
□雨
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スーパーの近くにある本屋なんて限られている
私は、そのに一目散に向かった
ただ、山崎に会って、本当の事を聞きたかった
「ハァ……ハァ……ッ!!」
少し走っていると
いた
山崎だ、隣には誰もいなかった
その瞬間ホッとしたが、まだ決まってない、女の人と別れた後かもしれない
でも……私は……
「や……山崎……」
「!!……ナマエ……」
声をかけると、驚いた顔で振り返ってきた山崎
どうしてそんな顔するの?
もしかして、私が来たらいけないの?
「……山崎……本当のことを言って……私を万事屋に送ってから、女の人と一緒にどこかに行ったの?」
「……ナマエ………」
「答えて」
心臓が激しく動く
息が荒くなるのを感じた
耳には、ドクドクと血液が流れる音
そして、山崎は私の目を見つめた
その目はとても冷めていた
まるで、別人の様に
「……そうだよ」
そして、しっかりと、確かに「そうだ」と言った
「……そっか……」
「俺……本当はナマエの事は情報源としか思ってないんだよ……副長に言われたんだ、万事屋の旦那を調べろってね……そしたら偶然、ナマエといういいモノを見つけてね……本当にちょうど良かったよ……でも、ナマエからはなんにも得られなかった……それに、万事屋の旦那も白だったしね……だから、今こうして、ナマエと別れようとしてるんだ」
「……ッ……」
長い言葉は何故かしっかりと私の耳にすんなりと入って来た、依頼の内容さえもあんまり入らないのに
そして、同時にショックも受けた
……山崎は私をモノとして見てたの?
「……山……崎……」
「なに……」
「残念だったね……私は……アンタなんて初めから好きじゃない!!私が銀さんの事を言わなかったのも、全部分かってたからだよ!!」
「ッ……それ本当?」
「さぁね、アンタなんかに教えるもんか、アンタは……ッ……最低だよ…ッ危うく本気で好きになりかけた……」
嘘
全部、私が言ったことは嘘
最後に、山崎に仕返しをしたかっただけ、それだけの嘘
今すぐ、私を抱き締めて欲しい…「俺も本当は嘘言ってた、ナマエを驚かせようとしただけ」そう言って欲しい
でも、山崎のその目が何よりの証拠
「……ナマエ、嘘だね」
「ッそんなことない!!」
「いいや、嘘……だって、なんで泣いてんのさ」
「ーーーーッ!!!?」
触ると確かに濡れていて、雨も降ってないのにおかしいと思い、あぁ、これは涙かと理解した
「……まぁ、いいや……じゃあねナマエ、中々楽しかったよこの半年……まるで本当に付き合ってるみたいだったよ…………ごめん……」
そう言い、山崎は歩いて行った
最後の方の声は、雨のせいで聞こえなかった
もう少し早く降ってくれれば、山崎を負かせたのに……
その場でしゃがみこんで、手で目を覆った
涙か分からない水滴が、手に沢山付いた
「そうだよ……本当は……大好きなんだよ……ッ……山崎……」
その水滴を握りながら呟いた
本当は大好き
どんなに、周りの人より劣っていても
たとえ、踏み台でも
花を咲かせるための土でも
私はそんな山崎が大好きだった
少しして後ろから何人かが歩いてくる音がして、私のすぐ後ろで止まった
「……ナマエ……」
「…………大丈夫ですか?」
「………………まぁ、そのよ……これから食べに行くか?」
「……ッ…………うん……」
そして、私は立ち上がって三人と一緒に歩いた
いつもだと、雨さえも降ってるとは思えないぐらい一緒にいると楽しい三人なのに、何故か、今だけは雨が降ってると思えた
何故か、傘をさしているのに、私の目は水滴を流し続けた
まるで、私の目だけに雨が降っているように