Short(log)

□君にとっては
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「ただいま……」

「おー、新八……お前……どうした?」

「え?」


万事屋に帰ると、銀さんがギョッとした顔でそう言ってきた


「お前……なんで泣いてんだ?」

「……あれ?」


頬を触ると確かに濡れていた

指についた涙を見ると、またあの瞬間を思い出してしまった


「……新八……お前……」

「……すいません…銀さん……多分ゴミが入ったと思います……ご飯……作りますね」

「あ、おい……」


銀さんになにか言われる前に台所に行った

……ハァ……それにしても……ナマエさん……あーもう……考えるな……考えたらまつ涙が出てしまう……

僕は、もう一度ため息をついてご飯を作り始めた




しばらくして、ある違和感に気が付いた

……材料……なんか足りなくね?

慌ててレシートを見てみると


「あ……しまった……キャベツ……」


今日のサラダに使うキャベツが無いのだ、別にサラダぐらい良いと思ったがよくよく考えると、昨日は久しぶりに依頼が入り、焼き肉を食べたのだ

今日の内にサラダを食べないと……健康に悪い……


「……行こうか……」


そう呟き、銀さんと神楽ちゃんに一言言ってから、外に出た

外はもう夜になっていた

スーパーに向かって歩いていると、前の方に見慣れた人物がいた

……ナマエさんだ……


「……あ……」


思わずさっきのことを思い出してしまう、我ながら女々しいと思うが、そこまで本気だったのだ

出てきそうになる涙を必死に堪え、ナマエさんに声をかけた


「こんばんわ、ナマエさんまた会いましたね」

「新八君!!今日は良く会うね」


また、あのやんわりとした笑顔で答えるナマエさん

その笑顔を見ると、気持ちは和らぐがまた胸が痛くなる


「どうしたの?こんな時間に」

「あぁ、実は料理の材料が無くて……また買いに行くんです」

「うわぁ…それはお気の毒」

「えへへ…うっかりしちゃって、ナマエさんは?危ないですよ?女の人が一人で」

「あー……うん、そうだね実はさ、この前友達に本借りてたの忘れてて」

「友達?」

「うん、土方さん」


……へー、土方さん……土方さん?

え?土方さん!?さっきの……友達!?


「え?嘘ォォォ!?だってナマエさんって土方さんの事が好きなんじゃ……!!」

「えぇぇぇぇぇ!?ないないない!!土方さんは私には勿体無いよ」


勢いで思わず口に出してしまったが、どうやらナマエさんは土方さんの事は友達としか思ってないらしい……

これは……またチャンス到来!!

へこたれていたが新八!!言え!!今しかない!!


「ナマエさん……」

「なに?新八君」

「あの……僕と……」


まるでこの世界でたった二人になった気持ちになった

ゆっくりと時が動いているような……そんな気持ちになった

そして、もう自分が何を言っているのかも分からないぐらいに緊張していた


「ナマエさん、ナマエさんにとって僕はどんな存在か分からないけど………ぼ………僕と…付き合ってくれませんか!?」


言えた……!!

ナマエさんは驚いた表情のまま固まっている

僕も同じだった、顔は熱く、手は力が入り過ぎて痛い、でもそんなことは全く気にならなかった

ただ、ただナマエさんの答えを待っていた

すると、何分たったのか分からない、もしかすると十秒もかかってないのかもしれない、でもナマエさんは口を開いて


「喜んで、私も好きだよ新八君」


と、言ってくれた

その瞬間、僕は人の目を気にせず、ナマエさんに抱き着いた

物陰から、誰かの視線も感じたが気にならなかった





それから、ナマエを家まで送って、サラダなんてどうでもいいや、と思いながら万事屋に帰ると銀さんと神楽ちゃんがニヨニヨしながら


「「街中で抱き着くとは…眼鏡のクセに中々やりますなぁ」」


と、からかわれた

どうやら物陰からの視線はこの二人の視線らしい

少し恥ずかしかったけど、今の僕は最高に嬉しい気分だった
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