Short(log)

□君にとっては
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(新八視点)


「あれ?新八君じゃん」

「あ、ナマエさん」


よくスーパーで会うナマエさん、この人は近くの甘味処の看板娘だ

いつもやんわりとした笑顔で挨拶をしてくれる、銀さんのツケには厳しいけど……


「また、銀さん達のご飯作るの?」

「はい…最近二人が当番をサボるんですよ……ハァ……」

「銀さん達もしっかりして欲しいね……」

「そうですよ………!!あぁ、すみません……愚痴言っちゃって……」

「ううん、大丈夫だよ」


そう言うとナマエさんはまたやんわりとした笑顔をした

……今日こそは言おうかな……

そう、僕は実は……このナマエさんに恋をしている……

でも、相手は人気の看板娘……やっぱり狙ってる人も居るみたいで……なかなか告白ができないでいる

でも、今日は違う!!今なら言える気がする!!


「あ……ナマエさん……」

「ん?なに?」


名前を呼ぶと振り返るナマエさん、あぁ……これでも十分と感じてしまう

でも、この笑顔は僕の物じゃない……どうせなら僕の物にしたい

その為には……言わなくちゃ……!!

僕は拳を握り、ドクドクと脈打つ心臓の音を聞きながら、息を吸った


「ナマエさん……僕と……」

「おい、ナマエ」


……ん?

僕の声は別の人の声によってかき消された、その声の主は……


「あぁ、土方さん」


真選組一のモテ男とも聞いた土方さんだった

すると、ナマエさんは僕の方を向かずに土方さんの方に走って行ってしまった


「どうしたんですか?」

「いや、ただ姿が見えたから呼んだだけだ」

「そうですか」


……あ……今……ナマエさん……

土方さんに会ってから、なんとなくナマエさんの周りの空気が和らいだ気がする

…………あぁ、そうか


「あ……そうだ新八君、なんだった?さっき…なにか言おうとしてたよね?」

「え?……あ……いや……別に何でもないです……じゃ、僕はこれで」


なんだか、ナマエさんの前にいるのが辛くて、僕はその場から逃げる様に離れた

……そうか……ナマエさんは……土方さんが……

その先の言葉を考えると、胸がキュッと締め付けられる様な気持ちになった

なんだか……僕、馬鹿みたいだ……

それから万事屋まで、考えを止めるように走って帰った

考えたら、涙が出てきそうで、この胸が締め付けられる気持ちに負けそうで

そう……この気持ちは……お通ちゃんの初回限定版のCDのパッケージが汚れてしまったような……そんな気持ちだった
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