Short(log)

□忍ってなに?
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やる事も特にないので縁側に座りボーッと空を眺めていると、ふと、気になった事があったので丁度目の前を通り過ぎた茶色の髪の忍を呼んでみる事にした


「ねぇ、佐助ぇ」

「ん?どうしたの?ナマエちゃん」


微笑みながら振り返り、私の声に反応するのは我らが武田軍の忍隊の長、猿飛佐助だ

ちなみに私は武田軍に居候している戦闘員と言うか傭兵と言うか、そんな感じの立ち位置だ

なのである意味佐助の上司なのだが…何故かこいつは私の事をナマエちゃんと呼ぶのだ


「佐助、何度も言ってるだろ?私の事をちゃん呼びするなって」

「あぁ……ごめんごめん」

「本当軽いなお前……」


佐助の軽い調子の言葉に思わず溜め息をついたが、そのまま私は話題を変え、本題に移る事にした


「なぁ佐助」

「ん?」

「…………忍って一体なんだ?」


一呼吸置いた後私は佐助に向かってそう言った、その瞬間何故か佐助が何もない所で転けてしまった

佐助の思いもしない動きに私は思わず縁側から飛び降りて、砂まみれの佐助の元に向かう


「どうした!?大丈夫か!?」


何故か引き攣った笑みを浮かべている佐助の腕を掴み、立ち上がらせると、咳払いをしながら佐助は服についた砂を払い始めた

砂埃が私の方に来たので軽く佐助を睨み付けながら咳払いをしていると


「……ナマエちゃん…いつの時代の人?」


と佐助が困ったようにそう聞いてきた、そんな佐助の言葉に私は思わず少し頭に来て


「失礼な!!しっかりこの戦国の時代を生きているんだぞ!?」


と声を出して佐助に反論した、確かに忍がどういう働きをしているのか具体的には分からないが、私は立派にこの戦国の世を生きているのだ


「本当かなぁ……?」

「なんだその目はァ!!」

「……ごめんごめん」


疑いの目を向けながら言ってきた佐助を怒鳴ると軽い感じで謝ってきた

一旦もう一度確認しよう、仮にも私は佐助の上司だぞ?

叩き斬ってやろうかと思いつつ佐助を睨んでいると、佐助は誰かに物を教えるように咳払いをすると


「あのね、忍って言うのは……」


と私の質問にようやく答えるような事を話してきた、急な事で一瞬反応が遅れたが私は佐助の言葉に意識を集中させる


「……なんなんだ…忍は……」

「敵軍に乗り込んだり、忍術を使ったりして、戦の時ナマエちゃんや、真田の旦那を守ったりするの、立派な戦での要の一つだよ」


私の言葉に佐助は少し小声で私に忍とは一体なんなのかを教えてきた、戦での要の一つ……佐助はそう言ったが私にはあまり実感がなかった


「……へぇ……」


実感がなかったためか、思わず薄い反応をしてしまった、そんな私に佐助は少し眉間にシワを寄せて


「ん?なに?なにか文句でも?」


と怒ったような口調でそう言ってきた、私はそんな佐助に思った事を話してみる事にした


「……佐助、普段それは大体部下にやらせてないか?」

「…………ハッ!!」


そう言うと佐助は目を見開き、驚いたような声を上げた

ほら、やっぱりそうだ、確かに忍のやる仕事は分かった、だが私が知りたいのは佐助の仕事なのだ

それを佐助に伝えてなかった私も私だが、流石佐助、私の聞きたかった事をなんとなく理解してくれたらしい


「?何をしておるのだ…二人とも…」

「あ、旦那」

「幸村か」


少し困ったような顔をしている佐助を眺めていると幸村が来た、幸村は私と佐助の上司、だが私は気軽に幸村と呼んでいる、勿論許しは取ってある


「あのな幸村、忍ってなに?具体的には佐助ってどんな事してるんだ?」


幸村に佐助を指差しながらそう聞くと、幸村は私達の元まで歩いてきてくれた


「佐助の仕事?」

「言ってあげて旦那、なるべくかっこよくね」

「佐助の仕事……」


顎に手を添えてしばらく考えた表情をしてから幸村は口を開いた


「某の団子作りと、洗濯物と、飯の支度でござる」


幸村の口から出てきた言葉に私と佐助は思わず膝の力が抜けてしまった

それは明らかに女中の仕事だぞ幸村ァ!?


「……旦那…何言ってんの?」

「む?そのまま仕事の内容を言ったまでだか…?」

「えぇ!?佐助そんな事を毎日してるの!?」


幸村の言葉に私は思わず佐助の方を向きながらそう聞くと佐助は恥ずかしそうに俯きながら


「うん……まぁ……時々?」


と確かに佐助は言った、佐助の言った事を聞いた瞬間、私は意外過ぎて思わず吹き出してしまった


「ブッ!!……ククッ……佐助それは女中の仕事……アハハハッ!!ひぃ……お腹痛い……!!」

「……?ナマエ殿…何を笑っているのだ?某はいつも佐助がやってる事を言ったんだが……?」

「イヤァァ!!!!旦那ァァ!!やめて!!やめてェェェェ!!」

「女々しいな!?どうした!!佐助ェェ!!」


一人でお腹が痛くなるほど笑い転げていると幸村は不思議そうに佐助がいつもやっている事だと言った、それを聞いた瞬間佐助は少し高めの声を出しながら自分の顔面を両手で覆ってしゃがんだ

その姿はさながら好きな男子の事を考えている女子のような……とにかく女々しい動きだった

そんな佐助の行動にも笑ってしまい、一人唖然としている幸村を置いて私は遂に笑いながら涙を流してしまった


「ナマエちゃん……?」

「アハハッ……!?あ……佐助……?」

「……さ……佐助?」


佐助は今まで女々しい行動をしていた事が嘘のようにドスの効いた声で私を呼んだ、良く見たら佐助はいつもの手裏剣を構えている

手裏剣からは佐助の"闇"の婆娑羅が見えているところから佐助は本気だ


「……佐助……すいませんでしたァ!!ほら幸村!!お前も謝れ!!」

「某も!?」


佐助に向かって私は素早く頭を下げてそう言った後、私は幸村の頭を掴みもう一度頭を下げた

幸村を完全に巻き込む形になってしまったが仕方ない、この目の前の闇をなんとかしないと……!!

そう思っていると佐助は手裏剣を仕舞った、そして腕を組み私達を見下ろした


「ナマエちゃん、旦那、今日の晩飯抜き!!」

「「ッ!!!?」」


佐助の声がやたら重くのしかかり、私と幸村は頭を下げたまま固まってしまった

流石に抜きにはしないだろうと思っていたが、佐助は本当にご飯を抜きにしてきた、幸村は途中本気で泣き出してしまい、親方様から哀れみの目と同情からご飯を少し貰っていたが……

後先考えず人をからかう物じゃないなと、私は一つ学習した
 

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