30000HIT御礼企画

□大型犬、静雄
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犬が唸る声がしてその直後物が壊れるような酷い音がした、その音を聞くとついついまたかと溜め息をついてしまう

くつろいでいたソファーから立ち上がり、隣の部屋へ行くと案の定壊れた家具だった物と小さくなった家具をガジガジと噛んでいる静雄が目に入る


「静雄」


いつものように静雄の名前を呼びながら噛んでいる家具を掴む、すると静雄は少し驚いたように家具から離れた

そのまま静雄が荒らした家具の破片を集めてゴミ箱に詰め込む、明らかに犬が壊したとは思えない程の荒らされ方だ

静雄はなんと言うか力が強い方なのか一般的な犬と比べると明らかに物を破壊する事が多い、それどころか家具の壊し方が犬とは思えない程の壊し方なのだ

一通り片付け終わり、木の棘等が刺さらないように掃除機をかける、音に驚いたのか静雄は尻尾を一瞬ピンッと伸ばしてそのまま部屋の隅に隠れてしまった

そんな静雄を横目に見て私は掃除機をかけ続けた、一通り綺麗になったので掃除機を止めたが静雄は出てくる様子はなかった、仕方がないと思いながら掃除機を片付けるため別の部屋へ移動した

掃除機を片付けていると今度は脱衣所の方で何か不審な音がした、当然ながら今この家には私と静雄しかいない、静雄はおそらくまだ掃除機に怖がっていると思うし脱衣所には入らないように躾をしている

ならば音を立てたのは第三者だ、私は思わず固唾を呑んで護身用に掃除機のヘッドを片手に脱衣所に向かった、やはり不審な音は脱衣所からで半開きの扉からガサゴソと何かを探しているような音がする

固唾を呑んで意を決し、私は勢いよくその扉を開けて部屋の中に飛び込んだ、だがその直後私は思わず護身用の掃除機のヘッドを落としてしまった、そして自分の顔に熱が溜まるのを感じた直後私は心の底から叫び声を上げた


「お取り込み中申し訳ございませんでした!!」


自分の家なのに敬語でそう叫び私は両手で顔を覆い後ろを向いた、実は脱衣所には何故か上半身裸で下半身にはタオルしか巻いてない金髪の男性がいたのだ、いつからここは全国民共有の脱衣所になったのだろうか

両手で顔の熱を感じながら私は後ろにいる男性に少し質問をしてみる事にした、もちろん泥棒だと危険なのでその前に扉を閉めたが、向こうも驚いているのか呆然としていた


「あの……貴方は一体どこから来たのでしょうか……泥棒さんなら家に金目の物ならございませんのでお引き取りください……」


若干違和感のある敬語を話しながら私はあまり刺激しないように泥棒を説得する事にした、すると少しして扉がゆっくりと開いたので慌てて振り向きいつでも逃げれるように足に力を入れた

しかし私が予想してた展開にはならないようで泥棒は少し眉毛を下げながら私を見下ろしていた、こうしてみると結構高身長で威圧感がすごい気がするだがそれと同時になにか違和感を感じた時泥棒がゆっくりと口を開いた


「マスター、信じないかもしれないが……俺はお前の愛犬の静雄だ、この通り御丁寧に尻尾と耳がある」


思わずマヌケた声が出たが仕方ないだろう、目の前にいた泥棒が急に自分は犬だとか尻尾だとか耳だとか様々な事を言ってくるのだから

混乱してなんてリアクションを取ればいいのか迷っていると泥棒はゆっくりと身を屈めて自分の頭の上にある二つの犬の耳のような部分を指さした

確かに犬の耳だ、オマケに身を屈めてくれたので尻尾も確認できた、どうやら私は今日常では考えられない出来事に遭遇しているようだ


「……静雄……お手……?」

「ん」


限界まで混乱してしまい思わずいつも犬の静雄に言っているようにお手を指示してしまった、すると泥棒は軽く返事をしながら犬の静雄と同じ様にお手をした

当然それだけでは信じられないので私は別の部屋に向かって静雄の名前を呼んでみたがいつもならすぐに来る静雄が来なかった、代わりに目の前にいる泥棒の尻尾がパタパタと音を立てて揺れただけだった


「本当に静雄……?」

「ああ、マスターの掃除機が怖くて部屋に逃げ込んだら何故かこうなってて……多分昨日新しく買った首輪かもしれねぇ……とりあえず着る物をと思ったんだが……タオルしかねぇ」


本当に静雄なのか聞くとゆっくりと頷いて何故こうなったのか詳しく教えてくれた、新しく買った首輪、それは確かバーテン服をイメージして作られた物で確かに今の人間の静雄の首にも同じ物が付いている

服はどうにもならないのは分かりきっているので私は軽く頭を抱えてしまった、もし大家さんが部屋に来たらなんて説明をすればいいのだろうか、こんなファンタジーな事を誰が信じてくれるだろうかと


「……それよりもまずは服だね、買ってくるよ」

「すまねぇ……俺はとりあえず犬に戻れないか探ってみる」


頭を抱えた結果とりあえず今の静雄の格好をなんとかしようという答えに辿りついた、私は静雄をリビングに連れて行き客が来ても鍵を開けないように言ってから家を出た

これからきっと私は非日常的な生活に慣れていくのだろうと考えると少し憂鬱な気分になる
 

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