30000HIT御礼企画

□中型犬、政宗
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私の愛犬政宗が怪我をして帰ってきた、右目を他の犬に噛まれたのか爪で切られたのか血塗ろにして帰ってきた

政宗にはストレスを溜めさせないようにいつでも外に出られる様にしていた、それが仇になったのか定かではないが私は自分の愛犬を抱き締めてとりあえず止血をするためにリビングへと運び込んだ

動物病院に連絡を入れながらあまり使わなくて薄く埃を被った救急箱から包帯を取り出す、政宗はジッと左目で私を眺めて申し訳なさそうに尻尾を項垂れていた

病院は先生が今他の動物の手術中なので少し時間がかかると言ってきたので止血だけは完璧に仕上げる事にする

キュッと強く傷口を押さえると政宗は小さく唸り始めた、そんな政宗に謝りながら私は傷口から止めどなく溢れ出す血を包帯に吸わせた


「政宗……しっかり……」


考えたくない事が頭を過ぎるそれを首を振ってかき消して私は血が止まるまで傷口を押さえ続けた

その甲斐あってか数十分で止血は完璧に仕上がった、そのまま新しい包帯を右目に巻いていつものキャリーバッグには入れずにガレージに止めてある車の助手席に政宗を座らせた

チラリと政宗に目をやると二、三日前に買ったばかりの新しい首輪が血で少し汚れているのを気に病んでいるのか、尻尾をシートにピッタリとくっつけて首輪を眺めていた

そんな政宗を見ながら私は助手席の扉を閉めた、そのままそばに置いておいた荷物と一緒に車の反対側に移動して運転席へ乗り込んだ


「今から病院に行くのかマスター?」

「うん、とりあえずその右目の傷を塞がないと」

「そうだなぁ……首輪を汚しちまってすまねぇ……」


聞こえた声に返事をしながらエンジンをかけようとキーを差し込もうとした時、ふと私は誰に話しかけているのだろうと思った、当然ながらこの車には今愛犬と私しかいない筈だ

もしかするとこのガレージに侵入して私の車に潜んでいた奴がいるのかもしれないそう思い私はやけに頭の中で響く心音を聞きながら声が聞こえた方へと振り返った

私の目に"ソイツ"が写り込んだ瞬間私は思わず女子とは思えない声で叫び声を上げた、そんな私の声に驚きながら耳を塞ぐ男が一人

いや正確に言えば"全裸の"男が一人いた、私の隣に、先程まで愛くるしい愛犬が座っていた助手席に、首輪と犬耳と尻尾を着け何故か"全裸の"男が


「なんッ……っは!?誰ッ!?」


思わず喉が引き攣り変な声を出しながら私はワナワナと震えなるべく下を見ないようにしながら男に質問をした

するとその男は何故かニヤリと笑い、右目に巻いてある包帯を優しく撫でながら左目を細めて私を見てゆっくりと口を開いた


「忘れたのかマスター?お前の愛犬、政宗だyou see?」


ふざけた事を抜かす露出狂から逃げるために私は自然な動作で車から降りてそのまま車内に鍵をかけた、その事に気が付いた露出狂は密室の車内で窓を叩きながら自分は政宗だと繰り返し叫んでいた

更には私と愛犬しか知らない事や何故今日政宗が怪我をしたのかと言う事を叫び出したのでどうやら私はこの突拍子もない事実を信じるしかない様だった

意を決して車のロックを外しながら動物病院になんて言えばいいのかと考える私を他所に政宗は信じてくれたのかと嬉しそうに言いながら車から降りてきた

とりあえずこのバカ犬に服を着せてやろうと思いながらここがガレージで良かったと思うのであった
 

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