30000HIT御礼企画
□中型犬、仗助
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先程からブンブンと尻尾を振りながらゲームをする愛犬を眺める、犬がゲームを出来るかと聞いたら出来ると答える人はどのくらいいるだろうか
まあ、ゲームをする天才犬を知っている人以外は出来ないと言うだろう、しかし私の愛犬は確かに楽しそうに尻尾を振りながらゲームをしている
天才犬ではないが、私の愛犬は人間の姿になれると言うちょっと特殊な犬なのだ、イタイとか幻覚とかそういうのでは断じてない、ある日首輪を愛犬に着けたら人間の姿になってしまっただけだ
「うわあああ……負けたァ」
「やめたら仗助?」
低い音楽が鳴り仗助が操作していたキャラクターが画面から消えた、仗助は唸りながら頭を抱えている、そんな仗助に苦笑いしながらそう言うとムスッとした表情でこちらを見てきた
「ここでやめたら俺は途中で物事を投げる男になっちまうっスよ?」
ゲームごときでそんな事言う物かと思うが仗助の目は本気だ、きっとどうしてもこのボスに勝ちたいのだろう
私は仗助に笑顔で頷きあと一回だけと言った、すると仗助はさっきまでムスッとしていた表情をパアッと花咲かせて嬉しそうに尻尾を振り出した
仗助は結構考えている事が顔に出るタイプだ、様々な音を出しながらはしゃぐ仗助を横目に私はココアでも飲もうかと台所に向かった
カップにインスタントのココアの粉を入れて鍋に牛乳を入れて温める、少し熱を帯びてきた所でカップに注ぐといい匂いが周りに広がった
ヤケドをしないように鍋を冷水で冷やしながら洗い、部屋に戻ろうとした時仗助が私の前に立っていた
「マスター」
「どうしたの仗助ゲームは?」
「どっか行ったのかと思ったっスよ……心配しました」
「ハハッごめん、仗助も飲む?」
少し眉毛を下げながらそう呟いてきた仗助にカップを持ち上げながらそう言うと返事の代わりにパタリと尻尾が揺れた音がした
けれど仗助はまだ浮かない顔をしている、どうかしたのかと思い顔を覗き込みながら名前を呼ぶと私を抱き締めてきた
驚きながらもココアを零さないように仗助の背中の後ろで両手でカップを持つ
「仗助……?」
「俺、人間の姿になっちまって……もしかしたらマスターに捨てられるんじゃねえっかって……」
「酷いなぁ……仗助、私がそんな事すると思う?」
仗助の言葉に思わず苦笑いしながらそう返すと仗助は私の首に顔を埋めながら首を左右に振った
「心配しなくても仗助は私の愛犬だよ」
「……マスター」
腕を伸ばしてココアを電子レンジの上に置き空いた両手を仗助の背中に回した、すると名前を呼びながら仗助はまたパタリと尻尾を振った
ワシャワシャと仗助の頭を撫でると少し恥ずかしそうに私から離れた仗助、その顔からはもう迷いは消えていた
そして少し照れたように頬を掻きながらココアを飲みたいと言って逃げるように部屋に戻って行った
尻尾が揺れている仗助の背中を見て私はクスリと笑ってからまた鍋に牛乳を入れてカップを取り出した、私のココアは少しぬるくなってしまった