30000HIT御礼企画

□中型犬、ギャリー
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(ギャリー視点)


「ほら、マスター今日は散歩行くのよね?」


そう言いながら昼寝しているマスターを揺する、すると唸りながら目を開けてこちらを見上げたマスター

まだ少し寝ぼけているマスターにおはようと挨拶をすればまだ呂律が回ってないが挨拶をし返してくれる、それだけでもアタシの心は満たされて無意識に尻尾が揺れパタパタとお気に入りのコートと尻尾がぶつかり合う

その音に気が付いたのかあくびをしながら身体を起こし、ベッドから降りながら私の頭に手を置いたマスター


「すぐ着替えてくるから待っててねギャリー」

「……ええ」


マスターは優しい、自分でも分からないまま人間になってしまった私に普通に接してくれるのだから……洗面所に向かうマスターの後ろ姿を眺めながらアタシはまた無意識に尻尾を揺らした

今の首輪とお出掛け用の首輪を交換すると犬の姿に戻った、マスターの顔が見上げないと見れないのが残念だけどこればかりは仕方ない

以前尻尾と耳を隠して外出したけど緊張であまり楽しめなかった、だからしばらくは犬のままで散歩を楽しみたい

玄関前で座りながらマスターを待っていると、適当なパーカーを羽織ってズボンを履いたラフな格好のマスターが奥からやってきた


「お待たせギャリー」

「ワフッ」


マスターの言葉に返事をするとクスクスと笑いながら私の頭に手を置いてリードを首輪に繋げ始めた

マスターが靴を履くのを待ってから外に出ると少し強めの日差しが目に当たる、目を細めているとマスターが歩き出したので慌ててついて行く

マンションを出ると近所の小学生が遊んでいるのが見えた、相変わらず元気な子達ね……なんて思いながらそのままいつもの散歩ルートを進む

ふとマスターを見上げるとイヤフォンを片耳に付けて音楽を聞いていた、以前両耳だと車が来た時危ないと注意したのをしっかり守っていてくれているみたいだ

嬉しくなってまた尻尾が揺れる、犬ってすぐ感情が尻尾にでるから大変だわ……

そんな犬らしくない考え事をしながらも散歩ルートを歩き続ける、いつもすれ違うお婆さん、最近引っ越してきたと言う新米の犬……いつもと何ら変わらない散歩だったけどマンションに入る前にマスターの足がピタリと止まった

アタシもそれに沿って止まりマスターの視線の先を辿って見ると、マスターの部屋の前に一人の男が立っていた


「……グルル……」


思わず喉の奥から警戒を込めた声が出てしまう、アタシらしくないけどその声を出さずにはいられなかった

あの男はマスターの元彼氏……自分勝手な男でマスターに散々迷惑をかけた挙句時々暴力も振って最低な男、自分から別れたクセに今だにこうしてマスターの元に現れてヨリを戻そうとしている

アタシの声に気が付いたのかソイツはマスターの方を見てきた、やめてよアンタなんかがマスターを見ないでマスターが怯えてるじゃないの!!そう言いたいけど今のアタシの口から出るのは犬が吠えている声でソイツは気にしていない様子


「……また来たの?何度も何度も懲りないね」

「……ヨリを戻さないか?」

「バカ言わないで」


マスターがいつもより何倍も冷たい声を発する、そんなマスターに男はタジタジとしているけどいつまで経ってもアタシ達の前から居なくならない

痺れを切らしたアタシはリードを喰わえてマスターと一緒に部屋の前に向かう、勿論部屋の前には男がいるので必然的にソイツに近付く事になるけどそれを目的とした事じゃない

マスターはなんとなくアタシのやりたい事に気が付いている様で戸惑いながらもポケットから鍵を取り出した、一方的男は何を勘違いしているのか心なしか少し微笑んでいる

いつまでも部屋の前から退かないソイツに思いっきり吠えると怯むように数歩後ろに下がった、その隙にマスターは鍵を開けた

アタシは素早くマスターと部屋の中に入り前足で下の鍵をかける、向こうからマスターの名前を呼ぶ男の声が聞こえるがアタシはそれを無視して玄関前に置いておいたお気に入りの服と帽子と首輪を着ける

少し視界が広くなった気がして顔を上げるとマスターがアタシを見ていた、いつものマスターの目には少しだけど確かに恐怖心がある


「マスターちょっと待っててね」


そんなマスターに微笑みながらそう言ってアタシはマスターを隠すように立って玄関の鍵を開けた、すると勢い良く扉が開いたので男が開けたのだと理解した


「ようやく開けて……」

「アタシのマスターに金輪際近付かないでくれる?」


男の言葉を遮るようにそう言うとアタシの容姿に驚いたのか肩をビクつかせて情けない声で謝りながらマンションから出て行った

それを確認してからゆっくりと扉を閉めるとマスターが少し申し訳なさそうに謝ってきた、そんなマスターの言葉に驚いたけどアタシは微笑みながら


「そんな顔しないでちょうだいマスター、アタシはマスターの番犬でもあるんだから、ここはお礼を言うところよ?」


と言った、するとマスターは少しだけ目を見開いてからまたクスクスと笑い出して頭を撫でてきた

パタパタとアタシの尻尾が揺れてコートとぶつかり合って音が出たのは言うまでもない
 

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